2022年4月からの成人年齢の引き下げに伴い、18歳、19歳、現役高校生までが、AVに意に反して出演させられる恐れがあると運動団体が立憲民主党と連携してキャンペーンをはじめた。
私が理事を務めるAV人権倫理機構は、早くから検討を進め「AVに出演を希望する女性に対する面談、契約、登録、撮影は、20歳に達してからとすることを強く推奨する」との通達を3月に出した。
別稿(論座「成年年齢引き下げに際し、AV出演年齢の自主規制をする意義とジレンマ」)で述べたように、2017年に結成された全ての大手業者が加入する適正AVグループ内では、18歳、19歳の出演は、そもそもニーズもないし起きないと予測される。
このような食い違いは、ありがちな展開なのだが、ここで、思いがけない展開となった。なんと自民党と公明党が、出演強要があるという運動団体の主張を事実と勘違いしたまま、AVの規正法を議員立法しようとPT(プロジェクトチーム)をつくり、駆け足で議員立法する方針である。
民主主義の基本は、理知的に議論することであるが、その前提に事実の確認があるべきことは言うまでもない。事実確認のプロセスがないがしろにされていることは、民主主義の危機といってよい。
本稿では、まず実態について示し、対応策の方向性を示すとともに、立法過程についても問題提起したい。

出演強要はほぼ起こりえない?
AVへの出演強要があることが議論の前提になってしまっているが、実は違う。その実態を丁寧に示したい。
出演強要の定義次第というところがあるので、正確に論じなければならない。定義は、「腕力は使わないが言葉巧みに意に反して撮影させられ、映像作品が販売されている」としておきたい。
非常に複雑な話になるので、先に、結論を簡潔にあげておく。
「腕力は使わないが言葉巧みに意に反して撮影」までいったケースは一定数(1%程度)あるとみるが、そのような作品が継続して配信販売されていることはない。