プーチンが喜ぶだけ…ロシアの工作にも無警戒で、「戦争はアメリカのせい」と主張する人々が見落としているもの
NATO東方拡大批判に群がる反米主義者たち
フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請が正式に決定した。両国はすでにEU加盟国であるだけでなく、実態としてNATOとの軍事面での連携を持ってきた国だ。迅速な加盟が予測されている。
この動きのきっかけは、言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵略攻撃だ。NATO拡大が「特別軍事行動」の理由の一つだと主張するプーチン大統領にしてみれば、威信を傷つけられる事態だ。だが欧州諸国の間では、今やロシアへの気遣いは不要かつ危険で、NATOの地域安全保障空間を広げることこそが必要だという総意ができあがっている。
これに対して、日本では、ウクライナのみならず、欧州地域の歴史的・民族的な背景などの情報が不足していることもあり、「アメリカの帝国主義的野心で拡大したNATOが冷戦の敗者であるロシアを追い詰めて暴発させた」といった大雑把な物語に飛びつきがちな土壌がある。そのため、国際秩序を守る側に立つという日本政府の立場をむしろ批判し、「悪いのはアメリカだ」、「責任はアメリカにある」、「アメリカが早く戦争を終わらせるべきだ」、といった主張を羅列する人々が後を絶たない。
率直に言って、こうした反米主義的傾向を持つ陰謀論者が、安易にNATO拡大批判を利用して、どさくさ紛れにアメリカ批判を始める様子は、極めて危険である。日本外交を迷走させる要素にもなりかねない。
もちろん、NATO拡大の是非それ自体は、冷戦終焉時から一貫して議論されている巨大な問題である。知的な政策論の検討には意味があり、日本でも促進されるべきだ。しかし、だからこそ、陰謀論者によるNATO拡大批判の悪用には、警戒をしなければならない。