2022.03.05
# エンタメ

“東京の地場産業”だった「アニメ制作」が、なぜかいま地方に続々進出しているワケ

「東京から遠い」はもう関係ない?

各地で次々に誕生するアニメ制作スタジオ

『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』の大ヒットなど、アニメ人気は国内外でますます盛り上がっている。こうした人気を背景に映画から配信・テレビ向けまで作品制作本数は近年急増している。毎年およそ300タイトルものアニメシリーズ、80本前後もの劇場アニメが公開されるほどだ。

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作品のニーズが高まる一方で、アニメ制作のキャパシティは限界と業界から悲鳴にも似た声も聞こえる。有力スタジオは2年、3年先まで制作予定がぎっしり。新たな企画がはいる余地はほとんどないほどだ。

従来のアニメスタジオだけでは増大するニーズに対応できないと、近年目立つのが新しいアニメスタジオの設立だ。このなかでこれまでアニメと結びつきがなかった地方での設立が目立っている。福岡、京都、札幌、名古屋といった中核都市だけでなく、秋田や岡山、鳥取県米子、新潟県柏崎と幅広い地域に広がっているのだ。2021年だけでも高知市で同県初のアニメ制作会社となるスタジオエイトカラーズが、鹿児島市にはHEIYAアニメーション事業部が設立された。

また、新潟市では都内のアニメ制作会社エイトビットのサテライトスタジオがオープンするなど、新設企業だけでなく、大手や有力制作会社が地方にスタジオ拠点を設ける例も多い。

『鬼滅の刃』でお馴染みのユーフォーテーブルは徳島、『呪術廻戦』のMAPPAは仙台、『進撃の巨人』のウィットスタジオが茨城県つくば市といった具合だ。いまや多くの人気アニメの絵が地方で描かれている。

 

“東京の地場産業”だったアニメ制作

アニメ制作は東京の地場産業と言われるほど、これまで東京に集中してきた。

とりわけ杉並区、練馬区、中野区、三鷹市、武蔵野市といった東京西部地域に多い。日本動画協会によれば全国のアニメ制作会社は2020年段階で811社、このうち東京は692社で、全体の85%を占める。アニメ制作会社が東京に集まるのは、番組を放送する首都圏キー局、映画会社やビデオメーカーのほとんどが東京に拠点があるからだ。

また東映アニメーションや虫プロが練馬区、東京ムービー(現トムス・エンタテインメント※トムスの現本社は中野区)やガンダムで有名なサンライズが杉並区にと、アニメ産業が立ち上がった50年代から70年代に、多くの制作会社がこの地域にスタジオを構えていたこともある。新しいスタジオは、これらから独立するかたちで周辺地域に拠点を持った。新しいスタジオは、これらから独立するかたちで周辺地域に拠点を持った。

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