「クソ漫画」がなぜか“バカ売れ”…年1.5億円以上の印税を生む「凄すぎる」プロデュース術
「LINEマンガ」上で9本の連載を抱え、うち6本は常に人気トップ 10 入り、連載開始からの総合ビューは9本合計2億ビュー超という圧倒的な成果を挙げるマンガ家・外薗昌也&その息子であるマンガプロデューサー・外薗史明が手の内を明かした著作のタイトルは『クソコンテンツを爆売れさせた ハリウッド流マーケティング術』(クロスメディア・パブリッシング)。
外薗史明氏が父であるマンガ家・外薗昌也と組んだ『鬼畜島』『パンプキンナイト』『臓物島』は少なくない読者からレビューで「クソ漫画」と評されているが、このように読者から悪く言われることは「狙い通り」だという。
しかし「クソ漫画」が「売れる」とはいったいどういうことなのか? 外薗史明氏に訊いた。
マンガプロデューサーの仕事とは?
――外薗史明さんが昌也さんのプロデューサーになる前となった後で部数や仕事量、収入はどのくらい変わりましたか?
外薗 直接的な印税収入だけで言えば、父が講談社で『犬神』などを連載していた頃は年3000~4000万円だったのが徐々に落ちてきて僕が入る以前の2011年頃には1500万円くらいになっていました。
そのころは連載が取れるか取れないかくらいになっていて、“かつて「アフタヌーン」「モーニング」で連載していた”という講談社のブランド力で食えていた状態でした。それが現在では連載を週10本抱え、この数年間で20数作品手がけ、その半分以上が継続しています。印税収入は僕が関わる前の約10倍になっています。
といってもLINEマンガに連載媒体を移してからは紙のコミックスはほとんど売れてないんですね。LINEは版元として見ると紙の単行本の販売ノウハウが弱く、リアル書店の棚が取れない。『鬼畜島』は以前、竹書房で連載していたときのほうが紙は10倍売れていました。だから今は実質、紙を捨てています。
一方でデジタルではすごく売れていて、そのうち65%はいわゆる「話売り」です。1話数十円で課金して読んでいる人が非常に多い。『犬神』や『エマージング』を連載していた頃とは客層が完全に変わっていて、若返っています。
――その結果をもたらしたのがプロデュースの力とのことですが、マンガに編集者がいるのは誰でも知っている一方、マンガの「プロデューサー」とはなんぞやという人も多いと思います。プロデューサーと編集者の仕事はどう違いますか。
外薗 映画にたとえて話すと、編集者はディレクターであり、マネジメントをする人間です。作家のスケジュールを管理し、原稿の仕上がりを追いかけ、次回の打ち合わせをし……という仕事ですね。
それに対してプロデューサーは作品の「入口」と「出口」を手がけます。入口は企画立案の部分、出口は完成した作品の売り方を決める部分です。
普通、出版社では編集者しか付きません。言ってみれば入口と出口の担当者・責任者がいない。だから入口ではマンガ家が描きたいと言ったものを描くか、編集者が描かせたいものを描くかになる。それはまだいいとしても、問題は出口です。売れたらラッキー、ダメなら作家のせいになってしまう。これはおかしい。映像業界では「売れなかったら営業努力をしなかったプロデューサーが悪い」というのが常識ですから。