アマゾンでいま起きていること
アマゾンの倉庫の仕事のことを「ブラック」だと批判することが時代遅れになってきました。変化の引き金となったのはDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
かつてアマゾンの倉庫での作業が劣悪であることを告発した記事や書籍が少なからずありました。『アマゾン・ドット・コムの光と影』や『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』などは、倉庫で実際に働いた筆者がそのテーマを取り上げた体験記です。
それらの体験記を読むと、以前のアマゾンの倉庫がそこで働く従業員にとって過酷な職場だったことがわかります。倉庫の中にある膨大な在庫の中から注文の商品をピックアップして梱包して発送できるようにする。その仕事を管理者がストップウォッチで、一回あたりの平均ピックアップ時間の目標以内に仕事が収まっているかどうか計測している。
一日中そうやって動き回って、それでも生産性が悪ければ給与に響くしくみでした。
休憩時間やランチタイムにはカフェテリアで食事やコーヒーで一息つくことができる業務ルールなのですが、倉庫からカフェテリアへの距離がまた長い。トイレも同様に遠くに設置してあって、トイレに行くぐらいなら我慢して仕事をつづけたほうがいいと判断する従業員も出てくるようです。
当時、こうした従業員が一日の歩行距離を測ると16キロを超える距離を歩いたことになっていたそうです。イギリスのアマゾンの倉庫では、最初はさびれた炭鉱町にアマゾンがやってきて地元に雇用を作ってくれるということで地元が沸いたそうです。ところが地元の雇用者たちはつぎつぎと脱落してルーマニア移民がその仕事をとってかわります。
そのルーマニア移民も数年で続けられなくなり新しい移民がやってくる。これがブラックと呼ばれた当時のアマゾンの状況でした。