ALS(筋萎縮性側索硬化症)を検索すると「感覚があるままに体が動かなくなる病気」という説明が多くあります。もう少し詳しい描写を探すと「筋肉が動かなくなってしまう」という説明がなされています。そして「現在、効果の認定されている治療法がない」と言われていることもわかります前回は2月25日木曜日NHK・あさイチに出演した事での皆さんの反応などで思ったこと、今後の発信や知ってもらいたいことについて書きましたが、大きな反響があって感謝しています。今回はシンプルなALSに対する皆さんからの疑問を体感してきた私の雑感をお話します。
2019年3月に足の異常を感じてから、9月にALSだと告知された津久井教生さん。現在は要介護4で手足の動きが難しくなり、原稿は割りばしを口にくわえて執筆くださっています。ALSのことを多くの人に知ってもらおうと、この連載「ALSと生きる」を続け、NHK「あさイチ」にも出演しました。前回「頑張れといっていいかわからない」という方々への回答を綴ってくださいましたが、今回は多くあった質問の中で辛くなったことを率直に伝えていただきます。
2020年の「ニャンちゅう」チームの皆さん。左から比嘉久美子さん、津久井さん、鎮西寿々歌さん 写真提供/津久井教生
ALSという難病は基本的理解が難しい
ALSに罹患してすぐのころに、多くの方に「津久井さん、焦らずにしっかりと治して、また一緒にお仕事しましょう」と言われ、ちょっと困ってしまう時期がありました。全く悪気のない、励ましの言葉であり、多くの病気に罹患した患者さんには通用するであろう言葉です。
「そうですね、ありがとうございます。治ったらお仕事しましょう」と返事をすれば、別にそれはそれでいいのではないか、という考え方もあります。
しかしその度ごとに「実は私のかかったALSという病気は治療法の確立していない難病で、今が一番元気なのです」と説明をすることを心がけていました。ALSという難病がどんな病気かを、罹患した者として伝えていけたらと思っていたからです。
ではなぜだんだん困ってしまったかというと、この質問に答えすぎて「治療法のない難病」という、自分が発している言葉がボディブローのように自分自身に効いてきてしまったのです。にこやかにかけていただいている言葉を否定しているうちに、落ち込んでしまったわけです。
そして「そうなんですか…」と相手も落ち込ませるわけで、本当に理解をしていただくのは難しいと思いました。
9月に入院中の津久井さん。明るい顔を見せているが、病気と向き合うことはポジティブに受け取ろうとしても簡単ではない。繰り返し現実を説明することで、自身が落ち込むことに…写真提供/津久井教生