「加害者家族であれば殺してもいい」究極の家族責任論を押し付ける人々

元農水次官事件・池袋暴走事故の教訓とは

2つの事件、バッシングの違い

昨年6月、自宅で長男を刺殺したとして殺人罪に問われ、一審・東京地裁で懲役6年の判決を言い渡された元農水事務次官の控訴審初公判が10月20日に東京高裁で開かれた。弁護側は、正当防衛が成立するとして無罪を主張している。

長年、引きこもり生活を送っていた長男の家庭内暴力に悩まされた家族による犯行であり、事件前の5月には川崎で無差別殺傷事件が発生し、犯人が引きこもり生活を送っていたと報道されていたことから、親として危機感を抱き、追い詰められたのではないかと同情する声も多かった。

〔PHOTO〕iStock
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一方、元官僚の経歴を有するエリートが起こした事件として10月8日に初公判が開かれている池袋暴走事故では、被告人は「上級国民」と呼ばれ、激しいバッシングに晒されている。

「暴走は車の故障」と過失を否定した無罪主張にも「責任転嫁」「全く反省していない」という批判が集中した。本件は、故意に起こした事故でないが、被害があまりに大きいことから、被告人の家族に対してさえも同情する声はほとんどない。

「世間」の評価では、池袋暴走事故の被告人の方が悪質性は高いと判断され、厳罰を望む声が圧倒的であるのに対し、元農水事務次官による長男刺殺事件では被告人に減刑を望む意見も多い。

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