ウイルスとともに猛威を振るう「デマ」
新型コロナウイルス(COVID-19)関係のデマの拡散が頻繁に起きている。3月末には、「4月1日か2日に東京が封鎖(ロックダウン)される」との情報が駆け巡った。
また、「トイレットペーパーの製造元は中国だから、品薄になる」というデマを耳にした、あるいは目にした方も多いだろう。それを聞いた一部の人が買い溜めに走った結果、店頭からトイレットペーパーが消え、業界団体などが「ほとんどは国産で在庫は十分」と発信するに至った。
とりわけ多いのが、健康・医療系の根拠のないデマだ。「27度のお湯を飲むとウイルスが死ぬ」というものから、「新型コロナウイルス予防にアルコール消毒は効果がない」といった人々の健康に直接悪影響を及ぼしそうなものまで、さまざまなデマが広まってしまっている。
これは日本だけの現象ではない、世界でも「コロイド銀の接種が新型コロナウイルスの予防・治療になる」など、危険なデマが拡散されているケースが少なくない。
そもそも、なぜこのように根拠のないデマが大量に拡散され、多くの人の行動に影響を与えてしまうのか。我々にできる対策はあるのか。混乱のただ中ではあるが、それらを「エビデンスベース」で考えていくことが本稿の目的である。
「拡散しやすい人」の特徴が判明
筆者らの研究チームは、2019年に実際に広くネットなどで拡散されたフェイクニュース9件を対象に、それらに対する人々の反応や行動を定量的に研究したi。その結果、フェイクニュースを信じて拡散する人の「意外な特徴」が浮き彫りになってきた。
結論から述べると、皮肉にも「自己評価が高い」人や、「メディアの与える負の影響を周囲の人たちに注意している」といった人が、むしろフェイクニュースを信じて拡散してしまいやすい傾向が見られた。
「自信があるほどフェイクニュースを拡散してしまう」というのは、一見すると矛盾するように見える。しかし、自身への評価が高かったり、「自分は騙されない」と思っていたりすることと、その人が本当にフェイクニュースに騙されない知識を持っているか、また対策をしているかということは、全く別の話である。
結局、自信をもって周りに積極的に発信・注意を促しているつもりが、結果としてフェイクニュースの拡散源になってしまっているのだ。