中国の「反撃」が噂されているが…
大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議を前に、米国のトランプ大統領が中国を攻め立てている。大統領はG20に合わせて、中国の習近平国家主席と会談する見通しだが、中国側は早くも手詰まり感が濃厚だ。
トランプ氏は6月18日、習氏と電話会談し、28、29両日に大阪で開かれるG20で米中首脳会談を開く、とツイッターで明らかにした。大統領は「会談に応じなければ、約3000億ドル相当の中国製品に対する最大25%の追加関税を直ちに発動する」と表明していた。
習氏とすれば、会談を受け入れたこと自体が「脅しに屈した形」である。メンツを重視する中国といえども、背に腹は変えられなかった。トランプ政権が追加関税をかければ、中国は米国への輸出品ほぼすべてが制裁対象になって、経済に大打撃になるからだ。
米中会談を受け入れたところで、習氏が反撃に使える選択肢は限られている。互いの輸入量の違い(中国の米国製品輸入量は米国の中国製品輸入量の4分の1強)から、制裁関税合戦では太刀打ちできない。
そこで中国メディアが報じてきたのは、レアアース(希土類)の輸出規制だ。だが、これも簡単ではない。
レアアースはコンピューターからミサイルまで幅広く使われ、現代産業に不可欠な資源である一方、中国は世界の生産量の7割を占めている。一方、米国はレアアースの供給をかなりの程度、中国からの輸入に依存している。
したがって、中国がレアアースの輸出規制を切り札に使う可能性はある。習氏が最近、レアアースの生産関連施設を視察したのも、米国をけん制する狙いと見られている(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-20/PRT4386JIJUR01、https://jp.reuters.com/article/china-us-rare-earth-idJPKCN1TI0SB)。
ところが、トランプ政権はそんな事態を予想して、早い段階から手を打ってきた。トランプ氏は2017年12月、大統領令を出して、商務省に対応策のとりまとめを指示した。これを受けて、商務省は6月4日、レアアースに関する報告書を発表した(https://www.commerce.gov/news/reports/2019/06/federal-strategy-ensure-secure-and-reliable-supplies-critical-minerals)。
それによれば、米国は「内務省が指定した死活的に重要な35の鉱物資源のうち、31資源を輸入に依存し(輸入依存度50%以上)、14資源は完全に輸入に頼っている」という。
報告書はレアアースの大半を輸入に頼る米国の脆弱性を認めたうえで、レアアースの発掘から精錬に至る供給体制を全面的に見直すとともに、中国の輸出規制に備えて、同盟国などとの連携を強める方針を打ち出した。
報告書は冒頭で「米国の脆弱性を軽減するのは、力による米国の繁栄と安全を確保するためにも重要であり、我が国の安全保障戦略や国家防衛戦略とも一致する」と書いている。商務省は「これは本質的に国家安全保障の問題」と認識しているのだ。