人の名前が出てこないあなたに教えたい「思い出すにはこうしなさい」

何だっけ? 目の前に いるのに……

あ~、ここまで出ているのに、どうしても思い出せない! 年を取ると、誰もが経験するのが、「ど忘れ」。ボケが始まったのかと心配な人も多いだろう。放っておいても大丈夫なの? 治す方法はある?

まさか、認知症?

タレントのみのもんたさん(74歳)は最近、人の名前が出てこなくてちょっと困っている。

「自分がやっている水道メーター販売会社で、目の前に座っている社員の名前が出てこない。もう2年も僕の前に座っているんだよ。それが出てこないんだ。まいっちゃうよ。最初は一生懸命考えていたけど、最近は面倒臭くなって、『キミ、名前何だっけ?』って聞いている。だから『社長、いい加減にしてください』って怒られるよ。でもしょうがないよね。だって出てこないんだもん(笑)」

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「正月なんて地獄だったよね。孫も8人いるんだけど、名前なんてめちゃくちゃよ。ほんと出てこなかった。顔を見れば思い出すかなと、こっちを振り向かせるために、『ちょっとちょっと、ほら』と呼びかけて、必死に思い出そうとしても、やっぱり間違えて孫に怒られるんだもん」

 

社員や孫といった「身内」なら名前を忘れてしまっても、笑い話で済ませられるかもしれない。だが、みのさんは現役のタレントだ。本番中に人の名前が出てこないというトラブルにはどう対処しているのだろうか。

「昔の俳優さんや女優さんの名前も出てこない。全部覚えていたはずなんだけど、往年の銀幕のスターの名前までも出てこない。なんでかねぇ。

だからトーク中はできるだけ、人の名前を言わないようにしている。でも『銭形平次』が出てこなかったときはショックだったよ。それで、『あの投げ銭で有名なさぁ』なんて言っちゃったりして……。まったく、74歳ってのは、そんなもんなのかなって思うよね。認知症の一歩手前なんじゃないかと思うときもあるよ」

みのさんほどではないにしても、新年会などの場面で久しぶりに会った友人の名前が思い出せない。もしくは、テレビに映った俳優の名前がとっさに出てこない。あなたにも最近、こんなことが多くないだろうか。

人の名前が出てこなくなったら、認知症の始まり―。そう不安に感じる人も多いはずだ。だが、安心してほしい。菅原脳神経外科クリニック院長の菅原道仁氏が言う。

「名前が出てこないくらいは、正常の範囲です。私たち医師が認知症だと判断するのは、病的な物忘れが起きている場合です。夕飯の内容を忘れるくらいはうっかりの範疇で、病的な物忘れだと食べたことすら忘れてしまいます。出来事そのものがすっぽりと抜けてしまう場合は、認知症と診断する一つの基準になります。なので、会ったことを覚えているのならば、うっかりの範囲内で、特に問題はありません」

言ってしまえば、身もフタもないが、人の名前が出てこなくなるのは、老化現象だ。誰もが避けられない。

菅原氏が続ける。

「人の名前が出てこないのは、『思い出し力』が低下することで起こります。もともと、人名は脳の『海馬』という器官を通じて、長期記憶として保存されています。それを必要に応じて引き出して使うのですが、知っているはずなのに名前が出てこないときは、長期記憶の領域から人名を引き出す力が衰えているわけですね。

この機能低下は加齢も原因の一つですが、習慣の影響も強い。思い出し力は、何度も思い出すことで鍛えられますが、社会人になるとそれがあまり必要なくなります。名前がわからなかったら名刺や携帯電話のアドレス帳を見ればいいだけなので、思い出す必要がなくなるからです」

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