世間から羨望の眼差しで見られているような「大人気」の街でも、「住んでみたら意外と不便だった」というケースは多く存在する。せっかく引っ越したのに、想像していた暮らしと違う……。定年後の終の棲家がこのような街なら、悔いても悔やみきれないのではないか。今回、本誌は「住みたい街ランキング」で名前の挙がっている人気の街の実態を徹底取材。実は「住みづらい街」のランキングを作成した――。
土日も外出できない
定年後、妻と二人で神奈川県鎌倉市に引っ越したという60代男性はこう嘆く。
「歴史と自然の豊かな街での生活に憧れていたんですが、まさかここまで落ち着きのないところだとは……。
土曜、日曜は道路が混みすぎて外出しようとすると時間がかかって仕方ない。かと言って歩いて街を散策しようとすれば、すさまじい人混みに目がクラクラします。小町通りなんて、平日でも外国人だらけで落ち着きません。
結局、妻と二人、テレビの前でダラダラと過ごす毎日。ゆったりとした暮らしであることに違いはありませんが、ちょっと想像とは違いますよね……」
男性は、「現役時代」は都内の証券会社に勤務するサラリーマンだった。家族を支えるために厳しいノルマをこなし、身を粉にして働き続けた40年間。
定年後は、自分と、家庭を守り続けてくれた妻へのプレゼントとして、憧れの街へと引っ越し、老後生活を送るつもりだったという。
だが、夢にまで見ていた鎌倉での暮らしは、想像していたようなものではなかった。夕暮れがせまると観光客もまばらになるが、最近では「民泊」も増え、夜も落ち着かない雰囲気だ。生活圏は都内に住んでいた頃よりも、かえって狭くなってしまった。
「この一軒家が、檻に思えることもありますよ」
男性はこう嘆息するのだった―。