一体どこが「大幅譲歩」だ
北朝鮮が韓国特使団との会談で、4月末に板門店で南北首脳会談を開くことで合意した。韓国側によれば、北朝鮮側は「非核化の意思を明らかにした」という。まさに私が先週、指摘したような展開である。この後、事態はどうなるのか。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の特使として訪朝し、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長らと会談した鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長が3月6日、記者会見して南北首脳会談の開催合意などを発表した。
それによれば、首脳会談だけでなく、北朝鮮は「体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」と述べたという。非核化問題と米朝関係正常化を協議するため「米国との対話の用意」や「対話が続く間の核実験やミサイル発射の凍結」も表明した。
最大のポイントは「非核化の意思を表明した」という点だ。具体的にどんな言い方だったのか、不明だが「体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」という発言を、韓国側は「非核化の意思表明」と解釈しているようだ。
私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54668)で、北朝鮮が「次は『核とミサイル問題を対話のテーブルに載せてもいい』と言い出すかもしれない」と書いた。今回の合意は、まさに「非核化」をテーブルの上に載せる展開になった。
今回の南北合意は「核実験とミサイル発射の凍結」も付け加えた。これらを合わせると一見、北朝鮮の大幅譲歩のように見える。だがそれは、まったくの見せかけにすぎない。
核実験やミサイルを発射しなくても、舞台裏で密かに開発を続行するのは可能だ。実行するかどうかの結論を後回しにして、単に非核化を話し合うだけでは意味がない。もちろん、合意した後で反故にすることもできる。
米韓合同軍事演習については、金正恩氏が「理解できる」と発言したと報じられた。これは妥協でも何でもない。彼が恐れているのは、もはや演習ではなく実戦である。首脳会談の開催まで時間を与えてくれれば、演習などいくらでもやってもらって結構なのだ。
それよりも、最大の注目点は北朝鮮が南北首脳会談の時期について「4月末」で合意した点である。ここに、北朝鮮側のタイム・スケジュールが読みとれる。
北にとっては「4月末までの時間確保が絶対条件」なのだ。仮に米国の圧力に韓国が負けて、最初の会談で即決裂となったとしても「4月末まで攻撃を回避できれば、なんとか完成にこぎつける」と踏んでいるに違いない。