小池百合子「排除」発言。普通のことを言っただけなのに炎上したワケ
あなたを駆動する「物語」について⑤過日、決着を見た衆院選2017。波紋を呼んだ小池百合子都知事のあの発言を、作家・赤坂真理さんが考察する。内容だけを取り出せば政党の党首としてごくふつうのことを言っただけなのに、なぜ世論は敏感に反応し、希望の党失速・立憲民主躍進にいたったのか。
「それは違法じゃないの?」
2017年10月22日に投票が行われた第48回衆議院議員総選挙は、9月28日に解散、公示が10月10日という、超特急選挙だった。
これに関しては、わたしの友人のオランダ人パートナーが友人に言った言葉が、とてもいいまとめになっているので、紹介したい。
「身勝手な首相が、北朝鮮ミサイルに便乗して議席を増やそうと、とつぜん解散しちゃったやつでしょ? もう選挙なの? こんな短期間じゃ他の政党とか準備できないじゃん? そんな事が違法でなくて可能なの? ま、日本人が選んだ政府だからしようがないとは思うけど、投票は大事だよ」
かくしてパートナー氏はわたしの友人を、投票所のあるハーグ(ハーグ陸戦条約のハーグだ。これはいろいろな軍事法廷で参照された条約で、極東軍事裁判も例外ではない)まで送り迎えしてくれたという。
外国人から日本を見て、「それは違法じゃないの?」「なんで責任者が罪に問われないの?」という声を、聞くことはよくある。
これもそうだし、たとえばバブル経済に関しても刑事罰に問われた者がなぜいないのか、とか、原子力発電所の事故に関しても、同様。
なるほど外から見る人が本質をずばっと言うことがあるな~、と唸り、もっともだと深くうなずく。
しかしながら問題は、どうしてそうなっているのか、どうしたらそれが止められるのか、わたしたちにわからない(正直に言ってわたしには、今のところわからない)ことにある。そこへくると、はたと立ち止まってしまう。
民たるあなたには、主(あるじ)の自覚があるのかね? 自分に問うと、ない。
安倍批判者に欠けている視点
「安倍首相の暴走を許していいんでしょうか!?」
と、選挙戦で、野党系の候補者たちが口々に叫んでいた。
たしかに安倍晋三首相のやり方は強引だし、精査すれば違法・違憲であるところすら見つけられるかもしれない。
でも、いつまでもその想像力で、いいんでしょうか?
と、思ってしまった。
一人の人間ややり方や方針や手続きを糾弾して、よしんばそれが成功したとして。一人の人を権力の座から引きずり下ろせたとして、同じような人は、出て来る。同じような慣性力は、働く。
また出る、という想像力を、持ったほうがいい。
出てこられるから、出てきた。それはメカニズムの力でもあるから。
出てきたひとつひとつを叩くのか?
しくみに目を向けなければ、首相が代わるたびに事態が悪くならないとも限らない。