今年も「秋の交通安全運動」が実施され、少なくないドライバーがキップを切られた。だが、それは本当に「交通安全のため」の取り締まりだったのか……。反則金を稼ぐ警察の手口は汚すぎる。
「はい、35kmオーバーです」
歩道と車道がセパレートされた片側一車線の広い直線道路。見たところ速度標識もない。60km/h道路だと判断し、アクセルを踏み60km/hに加速。やや加速が効いて70km/h近くになった。十分広い道路なのでこの程度のスピードなら危険性はないと思った、その瞬間——。
「ピッ、ピィー」
突然、側道から飛び出して来た警官が、「とまれ」の赤旗を振る。
「はい、35km/hオーバーですね。ここは40km/h制限ですよ。標識を見なかったのですか」
エッ、一体どこに標識があったのか? 男性は事態を飲み込めないまま、赤キップ(30km/h以上の速度違反、それより下は青キップとなる)を切られ、免許停止処分になってしまった……。
どうしても納得がいかない男性は、その後現場に戻り確認したところ、衝撃の事実を知る。道路脇に繁った街路樹により、「制限速度40km/h」の標識がほとんど隠れた状態になっていたのだ。
「これじゃあ標識が見えるわけがない。なんて汚い手を……。それが警察のやり方か。セコい、セコすぎる」
この男性から相談を受けたという、交通評論家の鶴田光秋氏が語る。
「この場合、免停になった彼に過失はまったくありません。道路標識は、歩行者や運転者に『わかりやすく、見やすい場所』に設置し、常に正常な状態に保つようにしなければ法律上有効とはいえない、と道路交通法解説にも記されている。
警察は、広くてスピードの出しやすい直線道路で、標識を故意に見えづらいまま放置して、検挙しやすくしていた可能性があります。これは不当な取り締まりですよ。こんな場所で『ネズミ捕り』をして反則金を稼ぐのは、交通安全目的ではなく、卑怯そのものです」
鶴田氏は、この男性に警視庁に異議申し立てを行うようにアドバイスをした。ところがその直後、警察は思いもよらぬ行動に出た。
自分たちは「不当なことは何もしていない」と言わんばかりに、標識を隠していた木を切り落としたのだ。これまでは見えていなかったと自ら宣言したようなものである(しかもその後、この場所でネズミ捕りが行われることはなくなった)。
さらにこの男性の「35km/hオーバー」自体が、スピードを「誤測定」されていた可能性もあるという。
「警察はスピードを測る際にレーダー装置を使うのですが、ガードレールなどの金属に当たると正確に測定することができない。つまり投射角によっては、実際のスピードより速く計測してしまうことがあるのです。違反車を多く捕まえるために、わざとやっている可能性もある」(前出の鶴田氏)
角を曲がったら白バイがいた
その他にもまだまだセコい「ワナ」はある。
たとえば、地下道の侵入直前に「二輪車通行禁止」の標識がある場所。ドライバーは直前で気づいてもそのまま進むしかなく、出口で警察が待ち構えているというわけだ。
もう一つのワナが、住宅街などにある、見えづらい「一時停止」の標識だ。標識に気づかずに、一旦停止せずに進むと、角を曲がった瞬間、白バイが待ち構えている。
「制限速度を順守していた車が後ろから煽られたので、スピードを上げたところ、後ろの車が実は覆面パトカーでそのまま捕まえられた」なんていうひどい話もある。
元白バイ隊員は「陸橋やトンネルの出口、下り坂などスピードを出しやすいところで待ち伏せするのは常套手段」と語る。