【大人も受けたい瀧本哲史の感動講義:前回のあらすじ】かのニュートンは中学時代、落ちこぼれていた。そして「微積分学」や「万有引力の法則」など、人類史をひっくり返すような研究の大半は、なんと田舎町での「たったひとりの1年半」のあいだに成し遂げられたのだ……。(→前回はこちら http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49003)
最大のキーワード「知は力なり」
ニュートンのことはなんとなくわかりました。それでもまだ、疑問は残ります。
いったいなぜ、ニュートンは古典的な哲学から、数学という「あたらしい真理」へと方針転換をしたのでしょうか? 哲学が嫌いだったわけでもなく、昔の哲学者のことも心の友だと思っていたのに、不思議ですよね?
ここで登場するのが、ケンブリッジ大学トリニティカレッジの大先輩にあたる、フランシス・ベーコンという人物です。
ニュートンほど有名な人物ではありませんし、はじめて聞く名前かもしれません。いったいどんな人なのか、簡単にご紹介しましょう。
フランシス・ベーコンは、ニュートンが生まれる100年近く前、16世紀から17世紀にかけて活躍した、イギリスの哲学者です。でも、ベーコンのことを、ただ「哲学者」と呼ぶには少し抵抗があります。
わずか12歳でケンブリッジ大学トリニティカレッジに入学したベーコンは、法律家でもありました。しかも、法務長官や大法官(裁判官の最高位)を務めたほどの法律家でした。
そして彼は、政治家でした。しかも枢密顧問官として、国王にさまざまなアドバイスをする、現在の日本でいう官房長官のような地位に就くほどの大政治家でした。さらに彼は、科学者でした。もちろん、哲学者でもありました。
要するに、ひとつのジャンルでは収まりきれないほどの才能をもった人物だったのです。
そんなベーコンが残した、有名な言葉があります。
「知は力なり」
ベーコンは、「知識とはなにか?」という問いに対して、「力だ」と断言します。
人類を前進させ、未来を変える、圧倒的な「力」なのだと。
ただし、ベーコンはここで、ひとつの条件をつけます。