新井浩文、ピエール瀧、吉田鋼太郎…いま気になる名脇役の涙の「下積み時代」

テレビを面白くする「いぶし銀」

二枚目で華があるわけではない。むしろ無骨である。でも時に主役を喰うほどの輝きを見せる脇役がいる。なぜ彼らはこんなにも魅力的で人間臭いのか。その答えは下積み時代にあった。

 

「お前に俳優は無理だ」

「ただ有名になりたいという気持ちだけで青森から東京に出てきたんです。俳優になったのは、ある屋台で映画プロデューサーの荒戸(源次郎)さんに偶然出会ったのがきっかけですね。荒戸さんがいなかったらウチは多分このポジションにいないと思います。映画の親。父親です」

俳優を志したきっかけについて新井浩文は、かつて映画誌『CUT』でこう答えている。

現在37歳。野性的な風貌でいて、自らのことを「ウチ」と呼ぶなどミステリアスな部分もある。「死んだ目俳優」と呼ばれ、殺し屋や猟奇的な役で数々の映画やドラマに出演。

昨年大ヒットしたドラマ『下町ロケット』で認知度を上げ、現在放送中の大河ドラマ『真田丸』では加藤清正役を務めるなど、今や日本を代表する名脇役との呼び声も高い新井だが、学生時代は「演技などまったくしたことのない」普通の青年だった。

19歳で青森から上京。世田谷区上町にある屋台でアルバイトをしながら、どうしたら有名になれるかを考えていた時に、出会ったのが荒戸氏だった。

新井と初めて会った日のことを、荒戸氏が懐かしむ。

「飲んでいたら奴が話しかけて来てね。話してみると『俳優になりたい』と言うから『お前、顔はきれいだけど、俳優は無理だな』とからかったんだよ。そしたらビール瓶で殴りかかろうとしてきた(笑)。まあ、それくらいあいつも本気だったんだろう」

荒戸氏は、鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』('80年)などを製作した伝説のプロデューサーで、阪本順治監督や原田芳雄ら映画関係者を連れて飲みに来る常連だった。

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