2016.04.07
# 企業・経営

すしざんまい社長が、あの「海賊壊滅作戦」の真相を語った!

ミサイルでは、解決できないことがある

マシンガンなんていらない!

最近、インターネットなどで、私がソマリアの海賊を撲滅した、という話が広まっているということを聞きました。

たしかに我が社は近年、紅海、アデン湾に面したアフリカのジブチ共和国とのビジネスに力を注いでいます。ジブチは、ソマリアに隣接する国で、マグロをはじめ水揚げした多くの種類の魚の加工、冷凍、流通に、これまで得た技術を提供しています。

ソマリアではこれまで、せっかく魚を獲っても加工技術がないため、一日1トンくらいしか売ることができませんでした。それを加工することで、輸出が可能になりました。中には海賊行為に手を染めていた人もいましたが、もともと漁民であったため、今では多くが漁師に戻っています。

これについて、お話ししておきたいと思います。

「すしざんまい」の社長・木村清氏が、同店を日本イチ有名な寿司チェーンにまで育てた過程を明かした『マグロ大王 木村清』が発売された。なぜあの価格で一級の寿司ネタを提供できるのか。ビジネスの秘密が満載だ。本書のなかから、話題の「海賊壊滅作戦」について記された部分を特別公開する。

ジブチ共和国からもほど近いソマリア沖は、キハダマグロ、バチマグロその他の世界的な好漁場です。ところが、ジブチを含むソマリア沿岸は、2004年に起きたスマトラ沖地震による津波で、壊滅的な打撃を受けてしまいました。もともと1990年代に始まる内戦、それをきっかけにソマリアの海賊の問題が生じ、現地は平和な暮らしとは縁遠い状況が続いていたところに起こったこの津波被害は、致命的なものでした。

それも影響したのか、2005年頃からは海賊被害がこの海域を通過する世界各国の船舶にも拡大し、ソマリア周辺海域が航行にも危険な状態となりました。そこで、日本の自衛隊や、アメリカ、フランス、ドイツ、スペインなど各国の軍隊が艦艇や哨戒機を派遣するなどして、海賊が出ないように努力してきました。

日本の自衛隊がジブチに活動拠点となる基地をつくったのは、2011年のことです。

ちょうどその前後に、私のもとへもジブチから要請があり、また、私も自衛隊の先輩として、後輩の現役自衛官たちがジブチに行っていて、「どうして海賊が出るんだろう」と不思議に思っていたこともあり、現地に行ってその状況を聞き、また現実に大統領や水産関係者、そこで働く人、国民の声も聞いてみた結果、今書いたような状況を把握することができました。

自衛隊の活動も素晴らしい。でもね、海賊を退治するのに、ミサイルで一掃することはできないのです。完全に武装集団化した凶悪な者を除いて、海賊の多くは小さい船で、持っているのもロシア製の粗末な機関銃だけ。蹴散らしても、ほかに暮らす手段がなければまた海賊に戻るだけです。

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