ベルギー連続テロ 「無法地帯」を放置したベルギー政府の不手際

EU全土が厳戒態勢
窓ガラスが吹き飛び煙が立ちこめるブリュッセル国際空港〔PHOTO〕gettyimages

新たなテロでEU全土が厳戒態勢に

ISテロリストのサラ・アブデスラムが、3月18日にブリュッセルで生け捕りになった。去年11月、130人もの犠牲者を出したパリの無差別テロの主犯の一人で、以来、フランスとベルギーが総力をあげて探していた男だ。

捕獲のニュースが入った途端、ベルギーのミシェル首相は舞い上がり、EUサミットをそそくさと中座。それを追いかけるようにしてやってきたオランド仏大統領とともに、捜査の経過を固唾をのんで見守った。

ところが、おそらくその報復だったのだろう、わずか4日後の22日、ブリュッセルの国際空港と、EU本部にほど近い地下鉄の駅で無差別テロが発生した。

23日現在、死者は31名、負傷者は270名。ISとの戦いが「エンドレス」になり始めたようで、ヨーロッパは混迷の様相を深めている。4人の犯人のうちの3人は自爆した模様だが、1人が逃走し、現在、ベルギーとフランスだけでなく、EU全土が厳戒態勢を敷いている。

18日に捕まったサラ・アブデスラムは、ベルギー生まれのモロッコ系フランス人というからややこしい。やはり襲撃に加わった兄のブラヒム・アブデスラムは、テロ当夜、現場で自爆しているし、もう一人の主犯といわれるアブデルハミド・アバウドは逃走したものの、5日後の18日に、フランスの特殊部隊に隠れ家を嗅ぎつけられ、大銃撃戦のあと死亡した。こちらもモロッコ系だが、国籍はベルギー。

ちなみに、ベルギーの首都圏にあるモレンベークという地区は、テロリストの温床として一躍有名になったが、アブデスラム兄弟もアバウドも、皆、ここの出身だ。

アブデスラムは26歳。最初は地元のゴロツキに過ぎなかったようだが、何らかのきっかけでどんどんイスラム過激派な活動にのめり込んでいく。不思議なのは、ここ数年はマークされていたはずなのに、テロ事件の直前まで、ヨーロッパをあちこち動き回っていたことだ。

去年10月には、南ドイツのウルムという町に数時間いたことがわかっている。そのあと、そこの難民施設から3人の難民が消えた。アブデスラムがピックアップしたらしい。消えた3人はシリア難民としてドイツに入っていたことがわかったが、あとの祭り。本当の素性はいまだに不明だ。

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