政府が隠したい不都合な数字
「GDPマイナス転落」「現金給与総額大幅減」でアベノミクスの限界が見えてきた
7カ月ぶりの「異変」
新年度に入っても企業業績は好調で、大幅な経常増益決算になっているにもかかわらず、企業がおしなべて賃上げやボーナスの増額を渋っていることが響いて、個人消費と景気回復に水をさす恐れが強まっている。頼みの綱だった米国向け輸出の景気押し上げ効果を、深刻化する中国バブル崩壊のマイナスの影響が帳消しにする懸念も大きくなる一方だ。
政権発足以来、一枚看板としてマスメディアがもてはやしてきたアベノミクスの化けの皮が完全に剥がれれば、安定的に推移してきた内閣支持率の流動化が加速しかねない。そうなれば、経済の停滞が政治への不信を呼び、政治不信が経済の停滞を増幅する悪循環に陥るだろう。
内閣府が8月17日に発表を予定している4~6月期の実質国内総生産(GDP)の行方に続いて、このところの連日の猛暑が時の氏神となって7~9月期の経済の下支え役を果たすことになるのか――。経済の先行きから目が離せなくなってきた。
いくつもの経済指標が洪水のように公表される中で、エコノミストたちにとってここ数ヵ月で最もショッキングだったのは、先週火曜日(8月4日)に厚生労働省が発表した6月の毎月勤労統計(速報値)だろう。
マスメディアは感度が鈍いのか、政権に都合の悪い指標には注目を集めたくないのか地味な扱いだったが、従業員1人当たりの現金給与総額が、前年同月比で2.4%マイナスの42万5727円に減ってしまったのだ。あれだけ安倍政権が今年の春闘の際に企業に賃上げを迫ったにもかかわらず、その効果はなかったと言わざるを得ない。現金給与額の減少は、7ヵ月ぶりという「異変」である。
この統計を発表当日の夕刊3ページで扱った日本経済新聞は、「夏のボーナスを6月に支給する企業の割合が下がったのが響いた」「厚労省は7月にボーナスを支払った企業が多い点を踏まえ、『6~8月の状況を総合的に判断する必要がある』としている」と政府の言い分をそのまま伝えた。
確かに厚労省の発表資料には、日経の記述に加えて、「従業員30人以上の事業所では、6月にボーナスを支給した企業の割合が37.7%で、4.2ポイント下がった」と書かれている。7月にボーナスを払う企業が多いのだから、6月の現金給与額の減少はたいした問題ではないというのだ。
しかし、こうした言い分は、統計に秘められた重要な問題から目をそらすものと言わざるを得ない。