『みんな!エスパーだよ!』が帰ってくる! 園子温監督の類稀な才能に触れられる快作を見逃すな!
ちょうど2年前にテレビ東京の金曜深夜枠で放送された連続ドラマ『みんな!エスパーだよ!』が、スペシャル版と映画版で復活することになった。当代屈指の実力派映画監督・園子温氏(53)が、初めて連ドラのチーフ演出とメーン脚本を手掛けた作品だ。
知る人ぞ知る快作で、この2年間、CS放送の日本映画チャンネルでは繰り返し再放送されてきた。映画ばかり放送している同チャンネルが連ドラを放送するのは、それ自体が珍しく、何度も放送されたのは高い評価と人気の表れだろう。
本家・テレ東でのスペシャル版は、連ドラでは描かれなかった物語の番外編で、放送は4月3日(金)の深夜0時12分から。映画は9月に全国公開される。映画は園監督のメーンフィールドだから、その才能が連ドラ以上に発揮されることだろう。
撮りたいものを撮り、大手資本にも与しない
大手芸能プロダクションの敏腕マネージャーに、「園監督の作品はすべて見ておいたほうが良い」と勧められたのは10年ほど前だった。その人は「いま、もっとも才能を感じる演出家だから」と念押しした。
その時点で園監督はすでに『Strange Circus 奇妙なサーカス』(2005年)や『紀子の食卓』(2006年)などを撮り、国内外で高い評価を受けていた。しかし、興業的に大成功を収めた作品はなく、大きな映画祭で監督賞を得たこともまだなかった。園監督をイチ押ししたマネージャーは「撮りたいものしか撮らないし、大手資本(テレビ局、映画会社)に与しないからだろう」と解説してくれた。
その後も園監督は撮りたいものしか撮らないように見えたし、大資本に擦り寄ることもなかった。だが、見る側を圧倒する作品を撮り続けることによって、自らの力で名声を高めていった。そして、今では誰もが知る人になった。
園監督が興業面を優先的に考えていたら、原発事故を扱った問題作『希望の国』(2012年)は撮らなかっただろうし、ヤクザの世界を舞台にした異色作『地獄でなぜ悪い』(2013年)も作らなかったはずだ。どちらの作品もテレビ局とのタイアップが難しい内容であり、配役もまたテレビ向きとは言えなかった。園作品には福山雅治のような連ドラ界の大スターが登場しない。
近年の映画の大半は、あらかじめ地上波でのテレビ放送を想定して制作される。テレビ局を制作委員会に巻き込まないと、制作費が集まりにくいからだ。テレビ局が出資しない場合も公開後に地上波で放送しないと、最終的に収益を黒字にしにくいため、テレビ界を視野に入れた映画が作られがちだ。
安定した収入や名声を第一に考えたら、現代の映画監督はテレビ局と組んだほうが賢明なのかもしれない。出資が得られるだけでなく、作品の公開前にはワイドショーや情報番組による大々的なPRも得られる。にもかかわらず、園監督はテレビにおもねることがなかった。今も地上波のコードではとても放送できないような映画ばかりを撮り続けている。