家入一真『広報担当』新田哲史が中から見た「選挙イノベーションへの道」【第1回】インターネットを活用して、有権者に「問い」を立てる
同時進行レポート
「政治家にとって僕らのやり方は未知かもしれないが、僕にとっては従来のやり方が未知なんです」---。東京都知事選で1人の若者が前代未聞の選挙戦を展開して話題になっている。立候補した16人で最年少となる35歳の起業家、家入一真氏だ。
あらかじめマニフェストを掲げて有権者に政策を問う従来型の選挙戦とは一線を画し、インターネットを活用して政策アイデアを公募し、選挙戦終盤にかけて有権者と一緒に公約を作り上げていくという手法を打ち出している。家入陣営で広報担当の参謀として家入氏を支援している新田哲史氏が、型破りな選挙戦に挑むことになった経緯や内幕を同時進行でレポートする。
駆け込みの出馬表明から、わずか3人での始動
家入が駆け込みで出馬表明したのは、告示前日の1月22日水曜日。友人の堀江貴文氏を伴って現れ、一時は都知事選に出馬が取りざたされた東国原英夫氏の同席する情報もあったことから、都庁記者クラブ駐在の報道陣を驚かせてしまった(申し訳ありません)。ただ、唐突だったのは実は私自身も同じだ。「家入さんが都知事選に出たがっているから会ってくれませんか」。共通の友人が話を持ちかけてきたのは、18日土曜日のことだった。
率直なところ、その時点では家入の出馬に半信半疑だった。
12月中旬、家入が最初に出馬をほのめかしたのは「1000RTで出馬」とツイートしたときだった。筆者はそれを「アゴラ」への寄稿で批判したこともある。その一方で、年末に初めて対面した際、情報技術を駆使した直接民主制を目指すハンガリーのインターネット民主党(IDE)など海外の事例を引き合いに「ウェブで民意を集める直接民主的な運動を日本でもやってみたい」と熱く語る側面もあった。
1月19日日曜。都内のホテルで友人の地方議員を伴い、家入の本気度を確かめた。昼下がりなのに寝坊で遅刻して現れたのには苦笑したが、不思議と憎めない。ジャスダック史上最年少上場という起業家として輝かしい経歴。その後はシェアハウスで若者の居場所を提供し、お金のないシングルマザーのためにツイッターで寄附を募るなど慈善事業的な行動もしている。
「就活に失敗してなぜ自殺しなければならないのか」「誰もがネットでお金を集めて選挙に出る事例を作りたい」---訥々とした口調で語る政治や社会に対する秘めた思いから、真剣なことはうかがえた。折しも、今回の知事選で浮上する名前に若手の名前は無く、都知事選の公開討論会が候補者の参加辞退で二度も流会したことに筆者は怒りを感じてもいたことから、こちらとしても本気で擁立してみようと思い立った。