東京五輪「皇室の政治利用」をめぐる首相官邸VS宮内庁の深刻な対立

 2020年夏季五輪の東京招致が決まり、日本列島は歓声に包まれた。その声にかき消されそうになりながら、福島第1原発の放射能物質汚染水漏れをめぐり、安倍晋三首相が国際オリンピック委員会(IOC)総会で「汚染水による影響は完全にブロックされている」と語ったことへの追及は続く。

 もうひとつ、忘れてはならないことがある。高円宮妃久子さまがIOC総会でスピーチされたことだ。久子さまがスピーチに至るまでに首相官邸と宮内庁が激烈な駆け引きを演じた。この論争は天皇陛下や皇室の「政治利用とは何か」という重い課題を突き付けている。

久子さまを担ぎ出した官邸

 招致に携わった政府関係者は勝因のひとつに必ず久子さまを挙げる。そのスピーチもさることながら、総会前夜のレセプションで久
子さまのご活躍が際立っていたからだ。

 国際会議に場なれした安倍首相でさえ、猪谷千春IOC名誉委員に導かれ、各国委員に「よろしくお願いします」とあいさつするのが精いっぱいだった。他の政府関係者は「壁の花」となった女性のように立っているだけだったという。

 その中で、ただひとり、会場で蝶のように舞っていたのが久子さまだった。会場にいた政府関係者によると―。

「ヨーロッパやロシア、中東では親愛の情を示すため、最初に頬にキスをする。国によって2回だったり、3回だったりする。久子さまはそれを瞬時に見分けてキスをされていた。また、相手によっては右手をすっと出して、手の甲へのキスを求める。あんなことができる日本人は皇室以外にはいませんよ」

 たしかに、そんな社交界の儀礼に通じているのは皇室の方々だけであり、かつスポーツに限定すると日本サッカー協会名誉総裁などを勤められている久子さまだけだろう。16年五輪招致に失敗した招致関係者は敗因を「政府と皇室が前面に立たなかったこと」と分析し、今回は政府と皇室に全面的に協力するよう求めた。

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