整備新幹線までGO! 消費税増税で始まった「公共投資ばらまき合戦」に景気底支えなど期待できないことはデータが証明している
消費税増税に関するウソは数多い。野田総理が言う「財政再建は待ったなし」というのも、本コラムで何回も言及したCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)という国債に対する保険料で簡単に論破できる(2011年12月19日付け、4月23日付けなどを参照)。本当に待ったなしならば、先進国の中でも保険料が安い(これは近い将来に財政破綻のない証)ので、高い保険金を受けられて大儲けができてしまう。破綻論者はどうして大儲けができるのにCDSを買わないのか。ウソをついているからだ。
消費税増税を社会保障の充実に使うというのも、カネには色が付いていないので、なんとでもいえる。民主党政権になって、予算組み替えができず予算歳出総額が自公政権時代より10兆円以上膨らんでいる(2011年12月26日付け)。歳出が水ぶくれしたため、消費税増税をしてもその分は消える。民主党が下手な政策をやろうとせずに、福田政権の時と同じ予算編成をすれば、消費税増税は不必要ともいえる。
消費税増税がなぜ行われるか。税率をアップする際に出てくる特定業界への軽減税率が官僚の利権になるのが大きな理由だが、経済界も労働界も目先の利益で消費税増税をのぞむということもある。経済界は法人税と社会保険料の引き上げを避けたいので、消費税増税になびく。労働界も所得税と社会保険料が上がらないように消費税増税を望む。ともに、庭先を掃除するために、消去法によって消費税増税を選ぶ。
しかも、消費税の社会保障目的税化という世界でも例をみない方法によって、国民を洗脳すると、高齢者ほど社会保障に関心を持つので、消費税増税は理解を得やすくなる。そのような高齢者を支持基盤とし、経済界や労働界からも支援を受ける民主・自民では消費税増税は「党利党略上」望ましいとなる。こうして、財務官僚の指導を受けた民・自は消費税増税で足並みをそろえたわけだ。
しかも、ここにきて、早くも増税の分け前ということで公共投資の歳出増の圧力が強まっている。民主党が掲げた「コンクリートから人へ」は完全に崩れている。その典型例は整備新幹線だ。
国土交通省は29日、整備新幹線の3区間の着工を認可した。消費税増税法案が衆議院で通過した直後を見計らって、総事業費が3兆円を超す大型公共事業を認めたのだ。
また、政府・民主党は今秋2012年度補正予算案の編成を目指している。これも大盤振る舞いだ。しかも、前原政調会長は、補正予算の成立後に解散・総選挙すべきとの考えを示しており、景気対策が選挙対策であることを露骨に示している。
一方の自民党は「国土強靭化法案」を今国会に提出している。10年間で総額200兆円をインフラ整備などに集中投資するという。
民・自・公の3党合意によって、消費税増税分を公共事業につぎ込めるかのような条文修正もされている。もう社会保障の充実に使うという野田首相の言葉はとうに消えてしまっている。消費税増税による景気減速を逆手にとって、公共投資をばらまこうという魂胆がミエミエだ。