
「国有化してちゃんとした経営になった企業というのは、今まで見たことがない。とんでもない勘違いをしておられる。公的資金を注入するにしても、過半数より3分の1に留めるべきで、できるだけ早く、通常の企業に戻るのが一番だ」
2月13日、日本経済団体連合会の米倉弘昌会長(74)がこうケンカを売れば、枝野幸男経済産業相(47)が反撃する。
「東京電力は実態として純粋な民間会社ではない。民間会社の基本として、一つは競争があり、一つは失敗すれば潰れることがある。東電が変わらないのに、単に税金を投入して支援することなど、到底、国民の納得は得られない。経団連で資金を集め、東電の資金を補ってもらえるなら、こんなにありがたいことはない」
東電国有化をめぐる政財界のバトルは広く報じられたが、〝当事者〟の本音が聞こえてこないのは不思議である。実は、東電のドン・勝俣恒久会長(71)は、枝野氏がバトルに応じた直後、全国紙経済部記者やメガバンクの関係者に対して、枝野氏への反論を展開していた。
その発言を記録したオフレコメモを本誌は入手したのだが、国民の怒りに必ずや火を付けるだろう。2月27日になって、ようやく総額2472億円の資産売却を前倒しで行うことを了承し、この期に及んでも自らの身を切るリストラ策を渋る東電の傲慢さがよく表れているからだ。
「(国費投入による国への議決権委譲について)十分な議決権をよこせと経産相は言っているが、3分の1だって十分な議決ができるんじゃないですかと言いたいね。そんな話より、国民負担を少なく、かつ安定した電力供給ができるのは国ではなく東電ではないのかね。視点が間違っているんじゃないかね。そもそも、議決権ていうけど東電から国にわたる株の種類がどうなるか、枝野経産相はお分かりになっているのかな。種類があるんだよ。そこら辺りは金融のプロであるフィナンシャルアドバイザー同士で話すことで、素人が出る幕じゃないんだよ。単純な話ばかりされても困るんだよ。国有化より東電を元の形で自立再生させるほうが国民負担も少なく、電力供給だって安定する。何もかもうまくできるんだ」
これを翻訳すると、「国はカネを出せ。口は挟むな」となる。資本金9000億円の東電に、国は賠償支援と合わせ1兆5800億円もの国費の投入を決めた。
「実質的に国は3分の2の大株主状態なのです。だいたい東電は、今回の原発事故で、会社としての責任を果たしていないじゃないですか。前任の清水正孝社長は体調不良による退任で、その後を引き受けた勝俣会長、西澤俊夫社長が引責したわけでもない」(全国紙経済部記者)
勝俣発言は、さらにこう続く。