2012.02.16
「租税法律主義」に果敢に挑戦した国税当局が防いだパチンコ店チェーンの申告漏れ4000億円
〔PHOTO〕gettyimages
総額が4000億円の「申告漏れ」が発覚、今週に入って、いっせいに報道された。税収不足が深刻で、増税論議が重ねられているなか、国税当局の久々の"快挙"といってよかろう。
ただ、"一般受け"はしていない。
『読売新聞』(2月12日付)が1面トップでスクープ、他のマスコミも後追いしたものの、広く国民にアピールするには至らない。
原因は、4000億円の節税を指南した元税理士が、税理士免許を返上のうえ海外に"移住"、「節税工作」そのものは罪に問えないこと。4000億円の内、3000億円は「これから発生する損失」であり、事前防御の色合いが濃いこと。「1000億円分の申告漏れ」については、指摘された約40のパチンコ店チェーンが修正申告に応じたものの、過少申告加算税を含む追徴税額は100億円に満たないこと---などが原因だ。
つまり、悪質さは問えないし、修正申告に応じさせる意味もあって徴収税額は少ない。加えて、スキームを作成した元税理士は、パチンコ店チェーンへの営業をやめており、これ以上の被害が出てくる可能性はない。
評価するとすれば、事前のチェック効果。損失を発生させて、業績好調な法人の利益と"相殺"するのは、「節税の第一歩」。その「合法的なしつらえ」を、国税当局の強い意思で突破したのだから、同種の「節税工作」が行なわれる危険性もなければ、3000億円の「実現損」が、使われることもない。
ただ、実名報道ではないことから国税当局の"弱気"を指摘できる。