厳しいリストラなんて大嘘ー銀行や株主の責任は問わず、賠償負担は国民にツケ回す
「東電調査委員会」最終報告のお手盛り
さらに電力料金の値上げまで
東京電力に関する経営・財務調査委員会が10月3日、野田佳彦首相に報告を提出し、内容を発表した。ここ数日、各紙がにぎやかに「全容判明」などと報じながら、中身は少しづつ違っていたので、本当のところ、どんな内容なのかと思っていたら、これがとんでもない代物だった。
このコラムは原子力損害賠償支援機構法ができたときから「最終的に賠償負担を国民につけ回す法律」と批判してきた。実際にふたを開けてみると、その通りだったどころか、東電がリストラをすればするほど、被災者や国民ではなく、銀行や株主がほっと一息つける仕組みになっていたのだ。
それは、こういう仕掛けである。
まず、東電はたしかにリストラをする。
連結ベースで7400人(約14%)の削減や人件費のカット、資産売却、グループ会社の合理化など10年間で2兆5455億円程度のコストを減らす。当初の東電の計画では1兆1853億円程度だったから、これだけみると「調査委は東電に厳しいリストラを迫った」という印象を与える。
賠償額がいくらになろうが東電の腹は痛まない
ところが、このリストラで捻出された費用が損害賠償に回るのかというと、まったくそうではない。ここが最大のポイントである。
賠償額は総計4兆5402億円と推計したが、これは全額、賠償支援機構が東電に資金を交付して賄う仕組みになっている。東電は賠償額がいくらになろうと、ぜんぶ機構が負担してくれるので腹は全然、痛まない。
支援機構法ができたとき、政府は「機構が東電に交付国債を交付し、東電は必要に応じて国債を現金化し賠償費用に充てる」と説明していた。私もそう書いた。ところが、法律をよく読むと交付国債のほかに「資金を交付する」という一文も入っていた。
これは「いざというとき使うんだな」と思っていたら、そうではなく、報告書は交付国債ではなく、初めから現金を交付するケースを想定している。あからさまな資金援助である。
ではリストラや資産売却で捻出した資金はどうなるのか、といえば、これは存続する東電の事業費用に回る。調査委は東電に一段のリストラを迫っているが、その結果、どうなるかといえば、東電は資産超過の会社になる。いわば贅肉を削ぎ落してピカピカの会社に生まれ変わるのだ。