
「まったく考えていない」-。
首相・菅直人は12月3日、記者団から内閣改造・民主党役員人事の可能性を聞かれて、きっぱりとこう言った。
臨時国会閉幕直後で暮れの来年度予算編成を控えている時期だからこう言ったのか、それとも現体制のままで来年の通常国会を乗り切れると本気で思っているのか……
後者だとすれば、野党に対する認識が極めて甘く、かつ、民主党執行部の脆弱さも分かっていないと言わざるを得ない。
まず、野党の分析から。自民、公明、みんなの党の主要野党は菅政権に対して強硬な姿勢で臨む。参院で問責決議が可決された官房長官・仙谷由人、国土交通相・馬淵澄夫が交代しなければ来年1月下旬召集の通常国会冒頭から審議に応じない構えだ。
もとより、衆院の不信任案と異なり、問責決議が可決されたからといって、法律的な制約はない。しかし、与野党の力関係からみて、主要野党が審議拒否した場合、今の民主党政権に中央突破する力はあるだろうか?
先の民主党代表選で元代表・小沢一郎に投票した人たち200人が「党内野党」となっていて、その一部は早くも仙谷らの辞任を求める発言を始めている。主要野党が強硬戦術をとった場合、党内で野党にエールを送る動きが出ないとも限らない。
この事態を招いたのは、政権側が公明党の取り込みに失敗したことが原因だ。たしかに公明党は一時、今年度補正予算案に賛成する素振りを見せた。しかし、結局、反対に回り、さらに問責決議で自民党などとの共同歩調に走ったのは以下の理由からだ。
1)菅内閣の支持率が急落し存亡の危機に陥っているのに、協力しても何の得もない
2)来年4月に統一地方選を控え、政権と対決していた方が選挙を戦いやすい
3)配慮に欠ける民主党政権の対応
配慮に欠けるのはたとえば、秋の叙勲で元公明党委員長・矢野絢也に対して旭日大授章を授与したことだ。この時、公明党幹部には官房長官・仙谷由人から内定後に「事務的に決めた」と電話があっただけだった。矢野と公明党・創価学会との関係、元公明党委員長・竹入義勝を除いて勲章を断っている公明党国会議員の実情を考えれば、もっと丁寧な配慮があってしかるべきだった。