ここにきて「不景気」「ヤバい」と話題になっている「韓国の縦読み漫画業界」の「意外な実態」

ほんの2、3年ほど前まで景気の良い話や明るい見通しばかりが語られていたウェブトゥーン(縦スクロールコミック)だが、今年は韓国では「不景気」「ヤバい」と語られている。

韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が「漫画産業白書」2024年版を公表した。2024年版といっても主に2023年の調査データをまとめたものだから、リアルの動きからは約1年遅れだ。そこで、筆者が知る2024年の情報と合わせて、日本のマンガ産業と比較しながら韓国の漫画・ウェブトゥーンの動向を回顧してみたい。まずは事業者についてだ。

ウェブトゥーン市場の成長の鈍化

KOCCAの調査によると、2019年に6,400億ウォン(約680億円)だった韓国のウェブトゥーン市場は、2020年に1兆538億ウォン(約1,120億円、前年比65.3%増)、2021年に1兆5,660億ウォン(約1,660億円、前年比48.6%増)と急成長を遂げた。しかし2022年は1兆8,290億ウォン(約1,940億円)と成長率が16.8%まで鈍化。まだ数字は出ていないものの、業界では2024年はさらなる調整局面を迎えているとささやかれている。

直近では、戒厳令を出した大統領の弾劾をめぐって国民はみなデモに出かけたりテレビやYouTubeのニュースに張り付いているため、ウェブトゥーンやウェブ小説の売上は前年比・前月比で崖から転げ落ちるように激減しているという(まあ、これは短期的なものだろうが……)。

ともあれ、成長鈍化の背景には複数の構造的要因が存在する。

1.米国の金利引き上げによる投資マインドの冷え込み。特にハイリスク・ハイリターンと位置付けられるコンテンツ分野への投資が急減
2.為替市場における円安・ドル高の影響で日本市場での収益が目減りする一方、北米市場での事業展開コストが上昇する二重の逆風に見舞われた
3.新型コロナウイルス感染症の沈静化により巣ごもり需要が終焉し、オフラインコンテンツへの回帰が起こった
4.SMエンターテインメントの買収騒動の際にカカオの創業者が株価操作をしたという疑惑で逮捕されたことによる経営の混乱
PHOTO by iStock
 

これらの影響は業界大手にも表れている。

最大手のNAVER Webtoonを運営するWebtoon Entertainmentは2024年初頭に従業員の3%を削減し、ウェブ小説サービスを展開する子会社Wattpadの従業員も15%削減を実施。2番手のカカオエンターテインメントも2023年6月から10年以上の勤続者を対象に希望退職を実施し、2024年5月にはフランスでのサービスからの撤退を決定した。

こうした動きや、相次ぐスタジオの廃業、ウェブトゥーン事業からの撤退を受けて「ウェブトゥーンは終わった」「危機だ」と大騒ぎしている人たちも韓国や日本では少なくない。

だが、巣ごもり需要の終了の影響を受けたのはウェブトゥーンだけではない。2023、4年の数字を語るのであれば2020年から2022年までと比較するのではなく、2019年までと比べるべきだ。

SPONSORED