なぜ「兵庫の淡路島」は「パソナの島」となったのか…そのウラある「官と民」の独特の関係

パソナが運営する施設が数多く立地する淡路島は、ときに「パソナ島」と揶揄されることがあります。いったいなぜこの島で、どのような経緯でパソナによる開発が進んだのか。淡路島とパソナの独特の関係を、武蔵大学社会学部専任講師の林凌氏が描きます。

瀬戸内海と本州をつなぐ明石海峡大橋〔PHOTO〕iStock
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「パソナ島」をゆく

「パソナ島」……しばしば淡路島のことは、ネット上でこう呼ばれる。もちろん、理由がないわけではない。それは淡路島の北部の一角が、人材派遣業を主軸とする、パソナグループ(以下パソナ)の運営する施設に埋めつくされていることに起因している。

2020年9月に発表された、パソナの本社機能移転。人事・財務経理・経営企画などの機能の一部を淡路島に移転するというこの試みは、当時、様々な憶測を生んだが、パソナはこの夏、当初目標である1300人の配置転換が完了したと報告した(『日本経済新聞』2024.7.23)。

実際、今や20以上のパソナ関連施設が立ち並ぶ淡路島北部は、「淡路島西海岸」と名づけられ、面的な観光地化が進んでいる。パソナはさらに、2025年以降に大阪・関西万博のパビリオンを当該地へ移設し、観光拠点にすると発表している。

では、パソナはこの島でいったいなにをしているのか? 実際に淡路島を訪れてみると、パソナの動向がよく分かる。

神戸の中心・三宮のバスターミナルから、「北淡路西海岸ライン」という名前の高速バスが一日に数本出ている。このバス路線は、2021年に開設されたもので、実質的に本土から淡路島北部のパソナ関連施設にアクセスする際の公共交通の役割を担っている。

三宮の西にある垂水ジャンクションから長いトンネルを超え、明石海峡大橋を渡る。今話題の隈研吾事務所設計のサービスエリアがある淡路ICから下道に降りると、バスは以下のような施設の前に停まる。

「ニジゲンノモリ」(日本の漫画・ゲームコンテンツを活用したテーマパーク)、「禅坊 靖寧(ぜんぼう・せいねい)」(ヨガ・マクロビオティックなどを主軸とした高級宿泊・体験施設)、「青海波(せいがいは)」(劇場とレストランを兼ね備えた施設)、「ミエレ」(カフェ)。これらいささか耳慣れない名前の施設は、すべてパソナが経営している。

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