現代の日本人は長生きしていない?
私の父「(四世)茂山千作」(享年93歳)は他界する半年前まで現役で、祖父「(三世)茂山千作」(享年89歳)も86歳まで現役でした。
能楽師として、今なお活躍している野村萬先生や、野村万作先生、(四世)山本東次郎先生も、みなさん長寿で現役です。
さらに、長寿であることはもちろん、認知症もなく、介護も不要で、健康かつ元気にしておられます。
このように、狂言師は長寿が多いのですが、それは、伝統的な狂言技法にもとづいた所作や生活習慣が影響しているからです。
まずは、現代日本人の「長生き」について考えてみましょう。
現代の日本人は、平均寿命の長さで世界的に抜きんでています。
しかし、単に平均寿命が長いだけでは「じつは日本人は長生きしていない」と考えることもできます。

「長生き」を考える際に注目すべきは「健康寿命」という概念なのです。
現代日本人は、平均寿命が延びる一方で、健康寿命はほとんど変わっていません。
健康寿命とは、日常生活を支障なく過ごせる期間を指し、これが短いことは見過ごせない問題です。
2022年の厚生労働省のデータによれば、日本人女性の平均寿命は87歳であるのに対し、健康寿命は75歳に過ぎません。
男性の場合も、平均寿命が81歳であるのに対して、健康寿命が72歳です。
つまり、男女ともに平均的に10年ほど、何らかの病気を抱えたり、介護を必要としたりしているわけです。