ひと月に70本もの希少モデルを仕入れ、即転売。莫大な利益をあげる巨大転売組織が福岡にあった。一般顧客は買えないのに、なぜ彼らは大量購入できるのか。暴力団まで関わる転売システムに迫る。
転売組織のボスは元町議
福岡県北九州市を舞台に、ある「詐欺事件」が浮上している。
「今年3月頃、『ロレックスの転売ビジネスに出資しないか』と誘われました。『転売』という言葉に抵抗はありましたが、相手が福岡県内のある町の元町議だということもあり、信用して5000万円を出資した。しかし半年が経った頃、相手から『カネを返せない』と連絡があったんです。出資金をすべて使い込んでしまったと」
そう憤るのは、同市に住む会社経営者のA氏だ。怒ったA氏は、警察に被害届を提出し、すでに受理されているという。
筆者はこの話を聞いたとき、よくある「出資金詐欺」だろうと思った。ありもしない「事業」をでっち上げ、カネを集めてトンズラする手口だ。

だが、A氏への取材を続けると、他の出資金詐欺とはまったくの別物であることが明らかになってきた。「事業」はでっち上げどころか、元町議や正規品販売店、百貨店に暴力団までからんだ、ロレックス転売を巡る巨大な「裏ビジネス」が広がっていたのだ。
ロレックスはかねてからファンが多かったが、コロナ禍で品薄が続くと一気に価格が高騰、転売も横行するようになった。定価175万円の人気モデルのデイトナに500万円以上の値がついたり、すでに販売が終了している「レアモノ」だと4桁を超えることもある。
人気モデルや限定品を一般顧客が手に入れるのは極めて困難で、時計を探して販売店を走り回る「ロレックスマラソン」なる言葉まで生まれた。