クリエイターに過度な負担が…「韓国の縦読み漫画業界」で起きている「意外な現状」
韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が毎年実施・公表している『ウェブトゥーン事業体実態調査』と『ウェブトゥーン作家実態調査』の2023年度版が2024年1月に発表された。ウェブトゥーン連載の締め切りは週1回来るのに、個人作家が1話に対して制作にかかる平均日数は8.2日、作家にとってムリのない1話あたりのコマ(カット)数は30~40と思っているのに実際には平均65コマ(スタジオ制作では中央値が70コマ)と、読者やプラットフォームからの要求に対して現場のクリエイターには過度な負担がかかっている現状が浮き彫りになっている。
すべてひとりかアシスタントひとりで物語も絵も手がける作家が過半
『ウェブトゥーン作家実態調査2023年』によれば、「すべての過程を単独で創作」する作家39.3%、「単独創作(補助作家=アシスタントあり)」19.0%、「(ほかの)作家と共同作業」12.9%,「臨時雇用しての単独創作」11.5%とほとんどの作家はひとりかふたり程度で制作をしている。
『事業体実態調査』に収録されたプラットフォーム関係者のインタビューによると、2023年時点で韓国では制作スタジオが80以上存在しているがまだ増えそうだという。実績のあるPD(プロデューサー)が外注とAIを活用した小スタジオを設立する動きがある。ただ、コロナ禍の巣ごもり需要終了に伴いウェブトゥーン市場の成長が鈍化していることもあり、以前のように次々参入するような段階ではなくなっている。
いずれにしても数の上では個人クリエイターが主流であり、物語も絵も担当する作家のうち「すべての過程を単独で創作」が54.1%と過半を占めている。むしろ日本マンガの方がまったくのアシスタントなしで連載している商業作家の割合は少ないかもしれない(日本には同じような調査がないので比較ができないが)。
一年中連載している作家の手取りは……
調査時点で「一年中ずっと作品を連載」した作家の年間総収入平均は9,840.8万ウォンで前年度対比2,029.2万ウォン減少した(ただしこれはトップ作家がスタジオを設立して法人化したことで「個人作家」枠から外れた影響が大きい)。「1年以内に作品を連載した経験がある」作家では年平均6,476.5万ウォンで、やはり前年度対比2,097.2万ウォン減少。
一年中ずっと連載しているのといないのとでは年間3000万ウォン(約300万円)以上も売上が違う。連載中に休載しても「有給」にはならず単にその分の収入が減り、人気の維持にもマイナスに働くため、多くの作家が「休めない」と思っている。これはここ数年ずっと『作家調査』で問題視されていることだが、相変わらず解決の糸口は見えていない。
作家の支出の方を見ると、月平均の創作活動費用は平均249.1万ウォン(年間2989.2万ウォン)。つまり年間3000万ウォンくらい出ていっている。ということは、平均的な連載作家の粗利(総収入マイナス創作活動費用)は6500万ウォン-3000万ウォン=3500万ウォン弱、年中連載していれば9800万ウォン-3000万ウォン=6800万ウォンくらいになる。
もちろんこれはめちゃくちゃ売れているトップ作家を入れた「平均」だから、実際の「平均的な作家」はもう少し少ない所得ということになる。