「どうせオレは妻より収入が低いから」45歳妻を悩ませてきた「夫のプライド」が完全崩壊した日
共働き家庭がこれだけ増えた現在においても、「男性が家計の担い手であるべき」という考えはなかなかアップデートされないようだ。これはアメリカの調査をイギリスの大学教授が分析した結果だが、「夫は妻の収入が世帯収入の40%を上回ると苦痛を感じる」ことが判明している。日本でも同様の感覚の男性は少なくないだろう。
もともと共働きで夫のほうが収入が高かったエイミさん(45歳・仮名)一家では、子ども二人の成長にともない彼女が専業主婦となって、家事育児を切り盛りしてきた。しかし退職から4年後、余裕も出てきたエイミさんに、古巣の上司から声がかかる。彼女は前職の関連会社へ再就職し、再び共働き夫婦となったのだが、二人の関係を揺るがすある出来事が……。
エイミさん夫婦のエピソードから、引き続き、稼ぎとプライドの関係について考えていく。
家事も育児もやらなくなった夫
再び共働きの日々が始まったが、夫は明らかに家事をやる気をなくしていた。子どもたちとも自分に時間的余裕があるときに関わるだけだ。努力して時間を作り出そうとはしなかった。
「こうなったらしかたがない。月に2度ほど家事代行を頼んで掃除関係はすべてやってもらいました。もちろん費用は私が払った。夫は大反対だったけど、だったらあなたがやってよといったら黙りました。
あとからぶつぶつ『きみのお母さんがやってくれればいいのに』と言ったので、それもまたケンカの種になって。子どもの前で言い争うのは嫌だったから、なるべく我慢していたけど、子どもが寝てからけっこうケンカはしましたね」
再就職先では気持ちよく仕事ができた。本来だったらもっと残業をしたかったが、そういうわけにもいかないので仕事を持ち帰ることもあった。時間がないときは、子どもたちが宿題をしている横で、彼女も仕事をした。子どもたちは案外、おもしろがっていたという。
「夫は平日の帰宅がどんどん遅くなっていきましたね。それならそれでもかまわない。私は子どもたちと夕食をとって、一緒に宿題や仕事をして、ときには一緒に遊んだりして。ただでさえ忙しいのに、夫のことも気にかけなければいけない。これならいっそシングルマザーになったほうが楽かもしれないと思っていました」
娘が11歳、息子が10歳になったころ、エイミさんは昇進してますます多忙になっていった。ちょうどそのころ、エイミさんの父が倒れ、退院後は施設へ預けることになった。母が介護しきれないからだ。
「母は『もっとあなたを助けてあげられるわよ』と言い出した。だから自宅近くにマンションを借りて母に暮らしてもらうことにしたんです。
母は週に1度、父のところへ行っていましたが、それ以外は手伝ってくれました。本当にありがたかった。そのあたりの経緯を、夫にはほとんど話していません。母も夫と顔を合わせるのはなんとなく避けていたから」