2023.02.07

テクノロジーによる「ポスト資本主義」を夢みる「加速主義」、その思想が見逃していたこと

昨年10月に刊行され、話題を呼んでいる『オートメーションと労働の未来』(堀之内出版)。文筆家の木澤佐登志氏が、同書の読みどころを解説する。

 

AIの躍進

AI(人工知能)の進歩が目覚ましい。

近年、ディープラーニングやビッグデータを活用したAIが様々な領域で登場してきた。たとえば、いくつかのテキストを入力するだけで画像を自在に生成することができる画像生成AI「Midjourney」。2022年、「Midjourney」によって生成された作品が、アメリカ・コロラド州が開催するアートフェアのコンペティションで優勝し、アート界隈を騒然とさせたのは記憶に新しい。

2022年11月には、OpenAIがChatGPTと呼ばれるチャットボットを公開した。ChatGPTは、人間のように自然な文章を生成し、質問応答、対話、文章の生成などのタスクを行うことができる自然言語処理AIである。ChatGPTはTransformerと呼ばれる構造を持つニューラルネットワークを採用しており、文章中の単語を理解する能力に秀でている。のみならず、事前に膨大なテキストデータを学習することで、人間と見紛う文章を生成することを可能とし、現在では様々なアプリケーションに応用されるようになってきている。

だが、AIが活躍する領域は画像認識や自然言語処理にとどまらない。AIがもたらす可能性は多岐にわたる。たとえば、私たちが日々当たり前のように行っている仕事や労働も、AIの進歩によって不可逆的な影響を被るだろうと言われている。

AIを用いた自動運転技術、生産ラインのオートメーション化、画像認識AIを利用した自動検査、強化学習を使ったロボットの自律制御、またはAIを用いた予測分析、等々。これらのAIを導入した技術によって、これまで以上に効率的な生産と業務が可能となるとされている。

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