ドイツで政策を見て痛感…日本政府が「法治主義」を軽視しすぎという大問題

コロナ対策で浮き彫りに

西村康稔大臣が、酒類販売店や金融機関に対して、アルコールの提供を自粛しない飲食店との取り引きを差し控えるよう求めたことが大きな話題になった(ともに7月13日に撤回)。

現在、ドイツで研究をしている行政法学者の横田明美さんがこの件を念頭に、日本は法治主義での正規ルート(権利を制限するなら立法に基づく)を回避している範囲が広すぎるとツイートした。

日本政府のコロナウイルス対策はどのような意味で「法治主義」を回避・軽視しているのだろうか。また、「法律とコロナ対策」という観点から、横田さんが研究しているドイツと日本はどのように違っているのだろうか。話を聞いた。

西村康稔大臣〔PHOTO〕Gettyimages
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裁判所で争えない

——西村大臣の「要請」についてどうご覧になったか、詳しくおしえていただけますか。

横田 この西村大臣の要請については、飲食店側が訴訟を起こすことができない点が大きな問題だと思っています。

どういうことか、すでに訴訟になった例から考えるとわかりやすいと思います。今年3月、「カフェ・ラ・ボエム」や「権八」などのレストランを展開するグローバルダイニング社(以下、GD社)が東京地裁に東京都を提訴しました。東京都が出した夜8時以降の営業制限命令に従ったことで生じた損害の賠償を求める訴訟です。

この訴訟は、新型インフルエンザ特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法、以下「特措法」)に基づくものです。

特措法が今年2月に改正されたことによって、都道府県知事が過料による制裁つきの「命令」を出せるようになりました。それまでは都道府県知事は緊急事態宣言でも「指示」しかできなかったのですが、これには罰則がありませんでした。特措法改正後は緊急事態宣言だけでなくまん延防止等重点措置としても、飲食店などが「要請」に従わない場合、「命令」を出せるようになった。「命令」は、それに従わないと飲食店などに対して制裁が加えられるという点で強制力があります。

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