マルチ商法には“ハマらせる”トリックがあった…社会心理学者が明かす「目を覚まさせる方法」

妻がマルチ商法にハマり、娘も含めて家族が崩壊してしまったズュータンさん。自身の体験からマルチ商法で苦しい思いをした人たちの声を取材し、『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』(ポプラ社)という一冊の本にまとめた。

今回はそんなズュータンさんが、『なぜ、人は操られ支配されるのか』『だましの手口』などの著書を持つ、マインドコントロール研究や悪徳商法に詳しい心理学研究の第一人者、西田公昭 立正大学教授に心を支配するテクニックと対処法を聞く。

西田公昭教授
【プロフィール】
西田公昭(にしだ・きみあき)
1960年、徳島県に生まれる。立正大学心理学部教授。博士(社会学)。日本脱カルト協会代表理事。消費者契約法改正検討委員会委員。カルト宗教のマインドコントロールの研究や、詐欺・悪徳商法の心理学研究の第一人者として、新聞やテレビなどでも活躍している。オウム真理教事件や統一教会、尼崎連続変死事件など多数の裁判で、鑑定人および法廷証人として召喚される。著書多数。
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実態把握の難しいマルチ商法

ズュータン(以下、ズュ):被害者から話を聞くなかで気がついたことがあります。消費生活センターをはじめ、行政に被害や困っていることを相談しても、「本当のことを言ってるの?」などと言われたり、「マインドコントロールされている」と言うと怪訝な顔をされたりして、うまく理解してもらえなかった人がたくさんいるんです。

僕もそうだったので、それを聞くたびに、マルチ商法の被害がよく知られていないことに歯がゆい思いをしていました。先生は消費者庁の職員とお話する機会もあると思います。消費者庁内ではマルチ商法をどのように捉えているのでしょうか?

西田:消費者庁もマルチ商法には一定の問題意識を持ってはいるんです。ただ被害の実態を十分に把握できているかというとそうではない。以前に消費者教育をしている団体からの依頼で講演したのですが、あるマルチ商法企業がスポンサーになっていたことがありました。

ズュ:僕もあるNPOの代表の方から「よくマルチ商法企業から支援したいという話が来る」と聞いたことがあります。

西田:特に東日本大震災以降顕著になりましたね。うまく政治のなかに入り込んでいるケースもあるから批判が難しい。なによりマルチ商法は被害者の声が上がってこないので状況が浮かび上がってこないという面が大きいと思います。

ズュ:ただ声が上がりにくいのには理由があって、“騙されている人”は目が覚めないんです。

西田:それが「マインドコントロール」ですからね。

ズュ:マルチ商法をやめた人の話を聞くと、今もマインドコントロールにあっていたことに気づかないで過ごしているんだなと思うことがよくあります。僕のもとにも、やめて何年もしてから、「自分は騙されていたことに気づきました」と言って来て下さる方が多いんです。本人だけでなく周囲の人でもそうですね。

西田:マインドコントロールにあっていたことに気づくには、本人も周囲も時間がかかりますからね。

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