「落日」の日本、ここへきて「優しいアニメ」ばかりが“大人気”になるワケ
マーケターがヒットを分析したら…アニメ人気は世相を映すというが、爆発的ヒットとなった「鬼滅の刃」に続いて、最近は「スーパーカブ」や「ましろのおと」など、決して派手とはいえないアニメ作品がヒットしている。
トレンディドラマが盛り上がったバブル期とは好対照な現象であり、極端にいえば「おしん」が国民的人気ドラマとなった遠い昭和の時代に逆戻りしたかのような錯覚すら覚える。背景にあるのは、少子高齢化と経済の停滞で、先進国から脱落しつつある今日の日本の空気感ではないか――そう指摘するのはマーケッターで流通ストラテジストの小島健輔氏だ。
「勧善懲悪」ではない
週刊少年ジャンプの連載に発してコミックの単行本が電子版も含め累計で1億5000万部を突破し、20年10月に公開された劇場版「『鬼滅の刃』無限列車編」は日本歴代興行収入第一位、海外でも20年の興行収入第一位を獲得する爆発的ヒットとなり、老若男女を問わずコロナ禍の国民感情に刺さったとされる。
大正時代の寒村の悲劇に発して、鬼となった妹を人間に戻すべく、主人公が同じ志の仲間たちとともに鬼と修羅の戦いを繰り返す救いのないストーリーで、家族愛や友情、戦いと勝利と言った共感要素はあるものの、痛快な勧善懲悪の決着に至るわけでもなく、夢幻能にも通ずるやるせない弱者の共感を指摘する識者もある。
吸血鬼やゾンビといった西欧的ホラー要素もあるが、曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」、上田秋成の「雨月物語」などにも通ずる、日本の風土が生んだ長編伝奇小説と見ることもできよう。