もはや日本人の給料が全然上がらなくなった「根本的メカニズム」

働けど、働けど、働けど…

先進国では唯一のマイナス

「働けど働けど我が暮らし楽にならざり、ぢっと手を見る」は歌人・石川啄木の「一握の砂」の一首だが、現在ほどこの歌があてはまる時代はないだろう。

OECD(経済協力開発機構)は、残業代を含めた全労働者の収入に基づき、「一人当たりの賃金」を各国の通貨ベースで算出、指数化している。

それによると、2018年の日本人の1時間あたり賃金は1997年に比べ8.2%減少した。米国では81%上昇、英国では92%上昇しており、日本は先進国中で唯一のマイナスとなった。

なぜ、われわれの給与は上がらないのか。そこには様々な要素が複合的に絡み合っている。そこで、なるべく平易にわかりやすく、その理由を検証してみたい。

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まず、第1の要因として上げられるのが、日本企業の雇用システムの変化だ。

いわゆる“日本型経営”は「終身雇用制」と「年功型賃金制」という雇用システムから成り立っていた。企業は新卒を採用し、仕事を通じて職業訓練を行い、従業員の生産性を引き上げていく。加えて、年功賃金により、従業員は同じ企業で長く働くことで賃金が上昇する。これは、結果として高い生産性を持つ従業員の長期勤続につながり、終身雇用制が確立した。

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しかし、年功賃金や終身雇用は、日本の労働法下では解雇などによる従業員の調整が容易ではないため、企業収益が変動しても人件費を増減させられず、さらに、景気が悪化している経済状況の中では、“賃金の高止まり”につながる。これは、企業の経営が厳しい状況下においては、減少する利益の中で労働分配率が上昇することになる。

その解決策として、多くの日本企業が「欧米型経営」を取り入れ始めたことで、日本企業の雇用システムは劇的に変化した。

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