フォロワー22万人超、「レンタルなんもしない人」とは何者か? 離婚届の提出に同行、裁判の傍聴席に坐る……「なんもしない」サービスがなぜ今の日本社会で求められているのか?
初著書『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』も売れに売れている中、『居るのはつらいよ』で話題の臨床心理士・東畑開人さんとの特別対談!(青山ブックセンターにて6月16日収録)
「なんもしない」は、反社会的?
「なんもしない人(ぼく)を貸し出します。常時受付中です。国分寺駅からの交通費と、飲食代等の諸経費だけ(かかれば)ご負担いただきます。お問い合わせはDMでもなんでも。飲み食いと、ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます。」
(「レンタルなんもしない人」Twitterプロフィールより)
東畑:このトークイベントに、ぼくは怯えながらやってきました。企画書を見るとレンタルなんもしない人さんは、「ごくかんたんなうけこたえ」をしてくれるとのことでしたが、これは下手したら喋ることがなくなるのではないか、と……。
レンタル:「居るだけ」も今日のイベントのテーマに含まれているので、喋ることがなくなってもいいかなという気がするんですけどね。
東畑:あぁ、そうなんですか……では、始めましょうか。
レンタル:……。
東畑:……。
(会場笑)
東畑:つらいですね。ぼくはカウンセリングの仕事をしているんですが、たいてい「始めましょうか」と言ってカウンセリングを始めて、あとはクライエントが話し始めるのを待つんです。基本会話が受け身なんです。だから、こんな感じになってしまうんじゃないかと思って、怯えてました。
レンタル:ふふ、じゃあ、始めましょうか。
東畑:そうですよね、じゃあ主体性を発揮しましょう。喋ります。
まず、レンタルさんの本『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』(晶文社)を読んで、これは「反社会的な人物」だと思いました。あ、ヤクザという意味ではないですよ。「なんもしない」サービスを始めること自体が反社会的だということです。
普通の社会は「なんかする」のが取り決めですから、それにオブジェクションを唱えているということです。本の帯に「なんでこんなに優しいんだろう」と書いていますけど、そんなに優しい人ではないですよね。
レンタル:はい。違いますね。
東畑:「優しい」というよりは、反社会的な人であり、しかも頑固に反社会をやり通している。多分、今の社会が優しくないので、それに反しているという理由で「優しい」と帯に書かれたのではないか(笑)。三段論法的に「優しい」。
レンタル:反社会的……。そう見えるのは、社会的であることを諦めたからです。今の活動について、「子どもがいるのに、なにやってんだ!」とお説教をされますし、自分でも少しはそう思わないこともない。
でも今までさんざん頑張ってきて、その結果なにもできなくて、「なんもしない」をしているんです。またあの社会に戻されて、生きていくのはつらすぎる。そこに対する恐怖心が、反社会的に見えるのだろうと思います。
東畑:じゃあ、レンタルさんも怯えているんですか。
レンタル:はい。説教を受けるたびに怯えていますね。