これで本当に大丈夫か?
参院選は自民、公明の与党が勝利した。圧勝とまでは言えないが、改選定数の過半数を獲得したので、勝利と言って間違いない。気になるのは、選挙戦で与野党ともに安全保障問題を事実上、棚上げしてしまった点である。これで、日本は大丈夫か。
今回の参院選では、勝敗ラインがいくつも報じられた。たとえば、自民党の二階俊博幹事長は「改選定数(124)の過半数(63)」に置いた。「与野党のどちらが過半数を握るか」という分かりやすい目安だが、政治的に言えば、この数字にあまり意味はない。
それよりも政局を動かすかどうか、で言えば、安倍晋三首相が掲げた「非改選を含む参院定数(245)の過半数(53)」のほうが、はるかに意味がある。与党が参院で過半数を維持できなければ、政権の提出した法案が成立しないケースが生じるからだ。
たとえば、税制改正法案や特例公債法案を参院で可決できない事態になったら、大変だ。憲法が定めた「衆院の優越」によって、与党が衆院の可決だけで予算案を成立させたところで、歳入を確保できなくなってしまう。そうなったら、たちまち政権運営が行き詰まる。いわゆる「ねじれ国会」現象である。
実際、民主党政権時代の野田佳彦首相は2012年11月、ねじれ国会の下、野党の自民党に「衆院を解散しなければ、参院で特例公債法案を否決する」と迫られ、解散に踏み切ったが敗北し、政権を失ってしまった。参院で少数与党になり、政権が倒れた実例である。
もう1つの勝敗ラインは「改憲勢力が参院定数の3分の2(164)を握るかどうか」だった。これには85議席が必要だったが、結果は4議席足りなかった。だが、憲法改正のような大仕事を成し遂げるには、かえって良かったのではないか。
なぜかと言えば、あと4議席、野党の側から改憲賛成を得れば、国会発議の見通しが立つ。そうなれば、安倍政権は堂々と「与野党を超えた賛成で憲法改正を発議する」と訴えることが可能になる。野党にも改憲の必要性を認める議員はいる。けっして、実現不可能な話ではない。