今回の処分によって、一時的であれ、私の言論が封殺されただけでなく、明らかに裁判官の表現の自由は制限されました。
これまでは、すでに確定した判例について個人情報を完全に秘匿した状態のもの、いわば「事例」化された判例については、ネット上で自由に議論がされてきました。しかし今回の分限決定で、事実上、裁判官がネット上でこういう議論に参加することができなくなったことは明らかです。
しかし少なくとも、私が成功したことは、最高裁が、いかにいいかげんな判断をしているかってことを世に知らしめたことです。
一般の方は、最高裁は正しい手続きを踏んで正しい決定をしていると信じている。しかしそうではなかった。あり得ない事実認定しかできない裁判官、そして手続保障を全く理解していない裁判官が、こんな適当な決定をしていたわけです。
そもそも処分というのは、基本的には故意に悪いことをしたときにするものです。しかし今回は、故意による行為でもない。最高裁の歴史に残る恥ずかしい決定になるでしょう。ちなみに、テレビを買えばNHKの受信料を支払わなければならないとした最高裁判決は、今回の処分を下したのと同じ最高裁長官と最高裁判事たちによるものです。

愕然とする決定
最高裁大法廷(裁判長・大谷直人最高裁長官)は、10月17日、東京高裁の岡口基一判事への「戒告」処分を決定した。
「ブリーフ裁判官」として知られる岡口判事は、白ブリーフ姿の自撮り写真をツイッターのカバーページに掲げ、法律問題から時事問題、さらには性の話題まで多岐にわたってツイートしてきた。
処分の対象となったのは、今年5月、犬の返還訴訟について報じた新聞記事のURLを添付し、こうツイートしたことだった。
〈公園に放置されていた犬を保護し育てていたら、3か月くらい経って、もとの飼い主が名乗り出てきて、『返してください』『え? あなた? この犬を捨てたんでしょう? 3か月も放置しておきながら…』『裁判の結果は……』〉
このツイートによって、「もとの飼い主」は感情を傷付けられたと、東京高裁に抗議。同高裁の林道晴長官は、岡口判事にツイートをやめるよう強要したものの、応じなかったため、最高裁に懲戒を申し立てていたものだ。
最高裁大法廷は、岡口判事のツイートは、裁判所法49条で定める「品位を辱める行状」にあたるとして、14名の最高裁判事の全員一致意見として、戒告を言い渡したのである。
※
正直、最高裁の決定には愕然としました。
最高裁の判断を整理すると、次のようになります。このツイートを一般人が読めば、私が「もとの飼い主」が訴訟を起こしたこと自体を非難していると受け止める。裁判官が、訴訟を起こしたこと自体を非難していると一般人に受け止められるようなツイートをすることは、裁判官の「品位を辱める」行為である。だから処分するというものです。
しかしこの事実認定は、いくらなんでも無理がある。私のツイートから、犬を捨てたことを非難してると思う人はいるかもしれません。しかし、訴訟を起こしたこと自体を私が非難していると受け止める人など、いないですし、いたとしてもそれが「一般的」とはとても言えません。
すでに多くの法曹実務家や学者が、この点について、ありえない事実認定であると指摘しています。