水道対策ではなくて、景気対策?
第196回国会では、水道に関連する重要な法改正が議論された。
1つは、改正PFI法が可決成立したこと。PFIとは、公共施設の建設、維持管理、運営を民間の資金、ノウハウ・技術を活用して行うもの。高速道路、空港、上下水道など料金徴収を伴う公共施設について、所有権を公に残したまま運営権を民間に売却できるコンセッション方式がよく知られる。
今回の法改正で注目すべきは、上下水道事業のコンセッションについては特別に導入インセンティブが設けられたこと。地方公共団体が過去に借りた高金利の公的資金を、補償金なしに繰上償還できる。
もう1つは、水道法改正案が衆議院で可決されたこと(会期切れで継続審議)。水道法改正のおおまかな内容は、施設の老朽化や人口減少で、経営困難になった水道事業の基盤強化を進めるというものだが、審議中、問題視されたのはPFIの一手法であるコンセッションの導入について定められた第24条だった。
前述の改正PFI法と改正水道法案の24条は見事にリンクしているのだ。
もともと水道事業のコンセッション方式推進は、第一次アベノミクスの「第3の矢」として出てきた。
竹中平蔵・東洋大学教授は、「水道事業のコンセッションを実現できれば、企業の成長戦略と資産市場の活性化の双方に大きく貢献する」などと発言。政府は水道事業に関して6自治体でのコンセッション導入を目指したが(14〜16年度)、成立した自治体はゼロだった。そこで水道法改正案に明記し、特典をつけて優先的に検討することを推奨したわけだ。
こうしたアベノミクスの論調に合わせるように、メディアの多くは「水道事業の危機を回避するにはコンセッションしかない」と報道し、それに同調する首長、地方議員も多い。

しかし、事業を受託する企業にとっては給水人口が多く、今後も減少しない自治体こそがうまみがある。したがって規模の小さな自治体の問題は、この方式では解決しないという現実はあまり知られていない。
それに、多くの日本人は気付いていないが、コンセッションでの水道事業運営を受託するのは外国企業になる可能性が高い。2013年4月19日、麻生太郎副総理は、米国戦略国際問題研究所で、「世界中ほとんどの国で民間会社が水道を運営しているが、日本では国営もしくは市営・町営である。これらをすべて民営化する」と発言している。以降、コンセッションの担い手である「グローバルオペレーター」は日本に熱い視線を送ってきた。