あの時代になぜそんな技術が!?
ピラミッドやストーンヘンジに兵馬俑、三内丸山遺跡や五重塔に隠された、現代人もびっくりの「驚異のウルトラテクノロジー」はなぜ、どのように可能だったのか?
現代のハイテクを知り尽くす実験物理学者・志村史夫さん(ノースカロライナ州立大学終身教授)による、ブルーバックスを代表するロング&ベストセラー「現代科学で読み解く技術史ミステリー」シリーズの最新刊、『古代日本の超技術〈新装改訂版〉』と『古代世界の超技術〈改訂新版〉』が同時刊行されました!
それを記念して、残念ながら新刊には収録できなかったエピソードを短期集中連載でお届けします。
“神秘の発明王”ヘロンが、師匠のアイデアを精緻化した、現代も使われる「ある機械」とは?
そして、精密加工に用いていた「材料」とは?
いやはや驚きです。
またしてもヘロン!
現代でも町の消防団が使っている「手押し消火ポンプ」が最初につくられたのも、古代ギリシャにおいてである。
記録によれば、「圧縮した空気の圧力を使って水を押し出す」という原理のもとに、ピストン、シリンダー、弁がある圧力ポンプを最初につくったのは、紀元前3世紀の発明家・クテシビオスである。
そして、このクテシビオスの消火ポンプを、現在の消防団が使う消火ポンプにまで改良したのが、彼の弟子であるヘロンなのだ。
ヘロンの手動式消火ポンプの概略を次の図に示す。

どんな方向にも噴射可能の「すぐれもの」
2つのシリンダーは貯水タンクの底の部分に取りつけられ、その中にピストンが組み込まれている。梃子(てこ)棒の両端を上下させることによってピストンが作動し、水圧が変化してシリンダーの底にあるバルブが開閉する。
さらに、フラップバルブの開閉を通して左右のシリンダーから水が交互に中央パイプに送り込まれる。
中央パイプは内側と外側の二重構造になっていて、自由に回転させることができ、吸い上げられた水はホース、噴出ノズルを経て任意の方向の噴射が可能である。
このような精密な加工は、どんな材料を用いて行われたのか?