【特別企画】
「ときめきメモリアル」30周年! 大ヒット恋愛シミュレーションゲームは今プレイしてもやはり面白かった
「好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしら」から30年!
2024年5月27日 00:00
- 【ときめきメモリアル】
- 1994年5月27日 発売
今でこそ、恋愛シミュレーションゲームといえば多数の名作、良作が豊富なジャンルとして誰もが知るところ。その中にあって「どの作品が最初の1本か」を断言するのは難しいが、初期恋愛シミュレーションゲームの金字塔と間違いなく言えるのが、今年でデビュー30周年を迎えた「ときめきメモリアル」だろう。
本作は、1994年5月27日にPCエンジンSUPER CD-ROM^2向けに発売されたゲームで、プレイヤーは主人公として高校生活3年間を過ごしていく。そこで自分を磨きつつ、学校で知り合った女性キャラクターたちと会話を交わしたりデートしながら、いわゆる好感度を上げていき、卒業式の日に校内にある伝説の樹の下で意中の相手から告白されるのが目的となっている。
主人公は自分。高校3年間をどう過ごすかはプレイヤー次第
ゲームを始めると最初に、プレイヤーは主人公の名前と生年月日、あだ名を設定することとなる。名前に関しては、途中で出会う女の子たちは最初は名字で、親しくなるほどに名前やあだ名で呼びかけてくれるようになっていく。何も分からない初プレイ時は、後に名前で呼んでくれるようになっただけで驚いたものだった。合わせて、幼馴染みである藤崎詩織ちゃんの誕生日と生年月日、血液型も設定すればゲームスタートだ。
プレイヤーの、私立きらめき高校での学園生活は、特段何か小難しいことを行うわけではない。今週一週間、どんな行動をするか選ぶだけ。すると、平日6日間は自動的に選んだコマンドが実行される。従来のこの手のゲームは、主人公のパラメータ操作が複雑だったりしたためにやる気が出なかったが、本作は手軽で敷居が低かったのもヒットした要因かもしれない。
平日の学校帰りには、知り合った女の子と一緒に帰るイベントが発生することもある。最初のうちは声をかけても断られることが多いが、好感度が上がれば誘うとOKしてくれるようになるだけでなく、相手から声をかけてくれるようにも。こんな素敵なことが現実世界で起こりうるのかどうか、経験したことのない筆者には判別不能だが、当時は会話をあれこれ想像しつつ一緒に下校したものだ。
なお、ここでは“好感度”とザックリした表現にしているが、実際は“ときめき度”と“友好度”、そして女の子の堪忍袋である“傷心度”の3つがゲーム進行には絡んでくる。
月曜から土曜までのコマンド実行が終わると、休みとなる日曜日がやってくる。休日や祝日は、平日と同じく自分磨きのコマンドを入力しても良いが、知り合った女の子に連絡してデートの約束を取り付けることも可能だ。連休の場合、好感度次第では電話した翌日のデートもOKしてくれる。今時であればメッセージアプリで連絡し合うのかもしれないが、この頃は携帯電話ですら使用している人が多くなかった時代だった。なお女の子の好感度が上がると、学校などで「○月○日空いてますか?」とデートに誘われることも。
デートで行ける場所も最初は少ないものの、ゲーム内での時間が経過するごとにボウリング場や水族館、プラネタリウムなど新しい場所が次々と登場し、そこで楽しめるようになる。ただし、女の子ごとにデート先の好みが変わってくるので、しっかり下調べをしておきたい。指定した日を迎えればイベントが発生し、約束した彼女とのデートが楽しめるのだ。
主人公の幼馴染みである詩織ちゃん、進級すると現れる優美ちゃんを除いた女の子たちは、主人公のパラメータがある数値を超えるなどの一定条件を満たすと、イベントが発生して表舞台へと登場してくる。彼女たちにはそれぞれ注目している主人公のステータスがあり、デートなどもそれに沿った場所を好む仕組み。これが本作の特徴に繋がっており、13人いる女の子たちは、まさに13通りの豊かな個性を持っているのだ。
例えば、勉学はからっきしでも流行には敏感な朝日奈さんだったり、努力と根性が大好きで面倒見も良い虹野さん、一目惚れした主人公に当たり屋稼業(?)をしてくる館林さんなど、とにかく全員の魅力が際立っていた。これだけのバリエーションがあれば、どんなプレイヤーでも必ず好きになる女の子が1人は出てくるわけで、結果として誰もがドップリと沼にハマってしまうことになるのも頷けるというもの。
女の子たちと一緒に過ごす高校3年間をゲーム上で追体験することができるというコンセプト通り、文化祭や体育祭、修学旅行、受験といった学生生活を楽しめるイベントだけでなく、春にはお花見や冬にはクリスマスイベントと年末年始、そしてお約束のバレンタインやホワイトデーと、数多くの行事も盛り込まれていたのも人気が高かった一因だろう。
体育祭ではアクションゲームが楽しめたり、修学旅行ではRPGっぽい戦闘が体験できるなど、さまざまな楽しみ方が体験できたのもユニークなところ。筆者の高校時代の記憶といえば「帰宅部所属で、毎日授業終了と同時に学校を飛び出し、途中のゲーセンやデパートのパソコン売り場でゲームに夢中になっていたら3年間が終わっていて、文化祭も体育祭も、あまつさえ盆暮れ正月クリスマスの記憶すら何もない」というものなので、「ときめきメモリアル」に登場するきらめき高校での日々は、まさに理想の高校生活に思え、もうそこから現実世界に戻らなくても良いと何度も思ったほど。
こうしてプレイを進めていくと意中の相手以外の女の子も次々に登場し、気がつけば主人公は大勢の女子に囲まれてハーレム状態になっていく。ここで本命以外の対応をおろそかにすると、少しずつ他の女の子のご機嫌が斜めになっていき好感度が減少。最終的には、堪忍袋の緒が切れて爆発してしまう。いわゆる、爆弾処理に失敗という状態だ。
そうしないためには狙った相手だけでなく、その他の女の子とも上手にお付き合いして、ご機嫌を取っていかなければならない。爆弾をどう処理するかがハッピーエンドを迎えるためのカギでもあり、そのためにはいかにして意中の相手以外の女の子を出現させずにプレイを進めるか、というテクニックもあったほどだ。
とはいえ、実は意中の相手とのハッピーエンドを迎えるのは、詩織ちゃん以外はそれほど難しくない。また、告白されたい相手との特別なイベントを、すべて体験できるかどうかも重要なところだった。クリア後、その彼女とのアルバムを見ることができるのだが、その中すべてが網羅されていないと落胆したものだ。有名なところでは、虹野さんの“虹弁”や、詩織ちゃんとの相合い傘などがあるが、“いつ”、“誰と”、“どこ”で起きるかを知っておかないと、実はなかなか回収が難しい。今ならば攻略サイトを見れば即解決だが、この当時は攻略本に頼ることになるため、どれを買うかで悩んだものだ。
そんな筆者が「ときめきメモリアル」にドップリとハマったのは、とあるプレイステーション雑誌で仕事をしていた時のこと。創刊号から掲載されていたゲームタイトル「ときめきメモリアル forever with you」の記事を見ていて、「かわいい女の子が登場するゲームっぽい。気になる。でも自分が担当しているスーチーパイのほうが可愛い!」とか思いながら仕事をしていたものの、どうしても気になってしょうがない。しばらくすると、担当者の元に開発中のCD-ROMが送られてきたので一緒に見たのだが、あまりにも良く動くオープニングと、それにマッチした曲に一発でヤられてしまい、発売まで期間があるにも関わらずその時点で心の中での購入決定フラグが立ってしまったほど大興奮したのを良く覚えている。
ちょうどこの頃、雑誌の付録に「ときめきメモリアル forever with you」のポスターをつけるという話が持ち上がる。ポスター自体は4つに折りたたまれ、雑誌の中程に余白部分をのり付けした状態で発行されるという話を聞き、なんとかして折り目のないポスターが手に入らないものかと画策。するとポスターの最終チェック段階で、B2サイズほどの紙に4枚印刷された状態のものが数枚届くという話を耳にする。これに修正指示などを書き込んで印刷所に返却するのだが、そのうちの1枚をまんまともらうことに成功。ホクホク顔で帰宅したが飾るところがなく、結局そのまま保存して現在に至る……なんともったいない。
事前にそんな感じで盛り上がっていたものの、発売日当日は編集部で仕事をしていたため後日と思っていたのだが、仕事仲間から「限定版がまだ残ってるお店を見つけたから早く買いに行け」との連絡が入り、急遽仕事を抜け出してプレイステーション本体とマウスをセットで買うことに。限定版にはマウスが付属しているのだが、それは保存用ということで使う用も調達。
環境がようやく整ったので、ここから先は寝る前の1時間が「ときメモタイム」となった。最初は1人ずつ順番にエンディングまでプレイしていったのだが、前述のように朝日奈さんのセリフで一瞬にして堕ちてしまったため、その後は朝日奈さん→詩織ちゃん→朝日奈さん→如月さん……というローテーションプレイを繰り返すことに。不思議なことに、何度プレイしてもまったく飽きずに遊べてしまうため、自宅のプレイステーションには「ときメモ」以外のソフトが入ることはほぼなかった(笑)。
さらに、これがきっかけで大手パソコン通信サイト“東京BBS”に出入りするようになるまでハマったほど。このサイトには「ときめきメモリアル」専用の掲示板があったのだが、そこでは本作の面白さを解く人がいれば、それぞれが堕ちた女の子の良いところを熱く語っていたりするなど、とにかく楽しい場所だった。筆者も例に漏れず、日々そこへの投稿を繰り返すほどドップリで、今もそこの住人と交流があるほど。その投稿内容は、今では恥ずかしくて見られないものが多いが……。
そんなことを繰り返しているうちに、「ときめきメモリアル」自体の人気がうなぎ登りになっていった。各地でファンに向けたイベントも開催されるようになったため、誌面で紹介すべく取材に何度も出かけ、さらにはドラマCDや数々のグッズ類なども紹介するついでに買ってしまうなど、まさに公私共に「ときメモにドップリ」とハマることに。
この頃の「ときメモ」の勢いはもの凄く、歌手デビューした藤崎詩織ちゃんや、そのPVなどを収録した作品「Selection 藤崎詩織」、さらには「ときめきメモリアル ドラマシリーズ」といったアドベンチャーゲーム、ゲームセンターで指を入れるのが特徴的だった「ときめきメモリアル ~おしえてYour heart~」など、トピックを挙げていくとキリが無いほど。この時期は「非常に忙しかった」と、親しいときメモ声優さんから聞いたが、これだけある作品数の多さを考えれば間違いないだろう。
そして、その当時の声優さんが一堂に集まり、発売から30周年を記念するイベントが2024年5月18日と19日に開催されたというのだから、やはり「ときめきメモリアル」は昔も今も別格のタイトルだと、改めて思い知らされたのだった。
シンプルにまとまったシステムと心に染み入る女の子たちのセリフ。現在プレイしても古さをまったく感じさせない傑作
自分の人生において、間違いなく大きな割合を占めた「ときめきメモリアル」だが、その面白さは今プレイしてもまったく衰えることはなかった。システムがわかりやすいこととだけでなく、登場キャラクターが多いため今でいうところの“推し”の女の子がほぼ必ず見つかるというのもポイントだろう。初代のPCエンジン版も良いが、プレイステーション版がより遊びやすいので、これからプレイするならPS版をオススメしたい。本数もそれなりに出回ったので、入手難易度も低いだろう。
高校時代が味気なく過ぎ去っていった人は、今からきらめき高校に入学して楽しい生活で記憶を上書きしてしまえば、きっとこれからの毎日が幸せな物になるかもしれない……?
(C)1994 KONAMI ALL RIGHTS RESERVED.