インフルエンサーは1つのメディアとして接する。Droptokyoに聞くこれからのメディアとインフルエンサーが創る新たな経済圏

2017/07/11

国内最大級のインフルエンサーネットワークを持つデジタルメディア『Droptokyo』や『The Fashion Post』を運営し専属モデル・タレントを抱え独立した経済圏を持つ株式会社ウィークデー

ソーシャルメディアの急成長とともに大手のメディア企業に匹敵する読者・フォロワーを抱えインフルエンサーと呼ばれるようになったモデルやアーティスト、クリエイターをマーケターへ引き合わせ、収支計画から税務申告までサポートするマネジメント体制を持ち、一般的なメディア企業やインフルエンサーマーケティングを提供する企業とは一線を画しています。

今回は株式会社ウィークデーの取締役CFO(最高財務責任者)を務める沼澤 裕太氏に、企業とインフルエンサーとの接し方ついてお話を伺いました。
(本記事はインタビュー前編の記事になります)

Interview / 株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部部長 管大輔

    ■目次
  1. プロフィール
  2. メディア紹介
  3. シェアしない日本ならではの仕組み
  4. コンテンツを広告クリエイティブにも活用
  5. インフルエンサーは一つのメディアとして接する
  6. インフルエンサーに求められる編集力
  7. インフルエンサーをインフルエンサーで終わらせない
  8. マネジメントの領域を超えた会社に

1. プロフィール

沼澤 裕太氏:株式会社ウィークデー 取締役CFO(最高財務責任者)

2. メディア紹介

:簡単にDroptokyoの特徴を教えていただけますか?

沼澤氏(以下、敬称略):Droptokyoは2007年から10年以上に渡って渋谷や原宿、表参道を中心に独自のスタイルを持ち、東京のストリートシーン・カルチャーをファッションで表現する若者を追い続け、ストリートスナップを掲載しているデジタルメディアです。国内だけでなく海外からのアクセスも多く、Droptokyoを見れば東京を代表するストリートシーンの「アイコン的な存在」が誰なのかを見つけることが出来ます。

提供資料引用

Droptokyoはインフルエンサーという概念が生まれる前から彼らor彼女ら取材し続けたこともあり、現在需要が高まっているインフルエンサーマーケティングの際には企画提案や仕事の依頼、連絡がスムーズに行うことが出来る関係値を持っておりDroptokyoの広告主・広告取扱高ともに年々増えています。

3. シェアしない日本ならではの仕組み

:インフルエンサーとの関係値に強みとのことですが、企業のマーケティングに寄与することも大切だと思います。そういった部分においてDroptokyoさんの強みはどういったところなのでしょうか。

沼澤: DroptokyoのWebサイト、ソーシャルメディア上での拡散に加えて、個々のソーシャルメディア上で影響力を持つ出演者たちに拡散してもらう仕組みを持っている点ですね。ブランドはメディア施策を通し商品ありきで一方方向に「この商品を投稿してくれ」といった形のインフルエンサーマーケティングとは全く異なり一緒に撮影して作り上げたコンテンツの企画性・クリエイティブに責任を持ってお互いのメディアに掲載するクロスメディア施策が可能です。

日本は欧米や日本を除くアジア諸国と比べてソーシャルメディア上の情報をシェアする頻度が低いといわれています。キュレーションサイトの炎上などの経緯もありインターネット上での情報は信頼度の低いものだと感じている調査結果もあるようです。そこで重要になってくるのは「シェアする行為」ではなく「誰が何をシェアしているのか」だと思います。

Droptokyoでは、フォロワー数以外の要素でもブランドが伝えたいメッセージやコンセプトとの接点・親和性を熟考した人選を提案しています。結果、投稿を確約しないタイアップ企画・広告コンテンツでも起用したインフルエンサーのソーシャルメディアの投稿率は80%を超えており、それは彼らor彼女らとの中長期に渡って築いてきた関係値があることが強みであると言えると思います。

年間を通してDroptokyoでタイアップ企画・広告コンテンツ制作を実施させて頂いているクライアントとの実績では起用したインフルエンサー自身の拡散によりDroptokyoが自社メディア単体でブランドに提供できる獲得ビュー数は1.25倍に増幅しています。実施いただいたクライアントからすると拡散された分だけ、想定よりも獲得ビュー単価が安くなっているんです。

4. コンテンツを広告クリエイティブにも活用

:なるほど、インフルエンサーの方とコンテンツを一緒に作り上げるという考え方なんですね。

沼澤:そうですね、ただDroptokyoのようなカテゴリやカルチャーに根付いたキャスティング力、制作企画力などのビュー数以外の強みを持つメディアの需要が高まる一方で、昨今ブランドからはさらなるのトラフィックを求められてきています。

そこでDroptokyoがブランドタイアップで制作したクリエイティブを2次使用してインスタグラムの広告クリエイティブに活用するとどういう効果が出るのかを実験してみたところ、リーチ単価が0.35円~0.45円エンゲージメント獲得単価だと3~5円と、商品画像などを流用した通常の広告運用の半分以下の単価で運用することに成功しました。

:この数値はすごいですね……。

沼澤:たとえ小さい規模のバーティカルメディア企業でもソーシャルメディアに親和性の高いクリエイティブ制作力があれば大手のメディア企業に匹敵する拡散の仕組みを持つこと可能なのだと確信しました。

5.  インフルエンサーは一つのメディアとして接する

:これまでの話を伺うと、一般的なインフルエンサーマーケティングとは全く異なりますね。

沼澤:そうですね。投稿と引き換えにギャラが発生する一般的なインフルエンサーマーケティングでは企業と彼らor彼女らはお金だけの関係になってしまうため持続性や多様性がなくなってしまいます。

インフルエンサーと呼ばれるいち個人が運営するソーシャルメディアにも世界観や編集ガイドラインに近い考え方やこだわりがあります。そこに出来るだけ世界観を壊さないクロスメディア施策を提案することが我々メディア企業がインフルエンサーマーケティングと向き合うべきだと考えてます。

広告・マーケティング業界はインフルエンサーという名称に盛り上がっていますが、当の本人たちは一部インフルエンサーという名称からの脱却を図っていて「その仕事は受けません」 「こういうクリエイティブは出したくないです」 といった人も少なくない。

インフルエンサーは一つのメディア企業と思って接し、営業部と編集部の両方をもち合わせるいち個人と向き合う気持ちがないとインフルエンサーマーケティングは成立しないどころか市場が崩壊してしまうかもしれません。

6. インフルエンサーに求められる編集力

:個人をメディアとして捉えたときに、インフルエンサーに求められる要素はどのようなものなのでしょうか。

沼澤:今後インフルエンサーにはメディアに匹敵するフォロワーと同時に編集力が求められると思っています。我々のクライアントは、ファッションブランドが大半です。ファッション市場は1900年代にデザインが優れたものが先に生まれた後、大量生産、大量消費に移り変わってきました。

そこで現在は、大量生産、大量消費が生んだファストファッションと、特殊生産、知的消費が健在するラグジュアリーファッションの2領域が主な主戦場になっています。そこで我々が発掘、育成しクライアントに提案していくインフルエンサーには大量消費時の気遣いや特殊生産時のこだわり、企画背景やデザイン趣旨、歴史などあらゆるメッセージを正しく消費者に還元する編集力が求められていると思います。

7. インフルエンサーの持続性ある収益モデルを確立する

:こういった考え方をインフルエンサーの方たちと共有するために教育などしているのでしょうか?

沼澤:Droptokyoではソーシャルメディアで影響力を持っているor期待出来る個人と専属でのマネジメント契約を結んでいます。ソーシャルメディア上でのコンセプトやトンマナ、目指したい方向性、フォロワー、そして売上をどう伸ばしていくかなどのグロース・営業戦略を具体化します。

戦略が固まってきたらDroptokyoの既存クライアントなどの企業のマーケターと引き合わせ、クライアントとの企画会議や打ち合わせやメディア向けのイベントに参加することでアカデミックな接点を創出し、収入が増え課税事業者になった方には会計・税務に関する勉強会なども実施しています。

マネジメント事業を開始してから約2年が経過しましたが、上記図のようにDroptokyoへの掲載回数に比例してフォロワーと売上を伸ばし、安定的に持続性のあるいち個人のソーシャルメディアを起点にした収益モデルを構築することが出来ています。

8. マネジメントの領域を超えた会社に

:今後のインフルエンサーマーケティングに関して取り組んでいきたいことを教えてください。

沼澤:インフルエンサーという言葉が日本では凄くチープになってしまっているのを変えていかなければいけないと思っています。企業はインフルエンサーと呼ばれるようになった彼らor彼女ら個々の生態系をマーケティングという枠を超えて理解しなければなりませんし、インフルエンサー側もブランドや広告会社の需要にしっかりと応えれるようにプロフェッショナルであるべきです。

我々は良くも悪くも影響力を持つメディアというアセットを通してインフルエンサーマーケティングの影響力と編集力向上を支援し、一時の実態のない流行り物ビジネスにならないように仕向けていかなければなりません。

私はDroptokyoが10年に渡って関係値を築いてきたインフルエンサーの生態系をもっと深く理解し、メディア企業やプロダクション、エンタータインメント企業、そして将来的には銀行などの金融機関までも巻き込んでソーシャルメディア上で影響力、収入源を持ついち個人が生み出す新たな経済圏を作りたいです。

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