琥珀色の戯言

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回転寿司「激安ネタ」のカラクリ ☆☆☆☆

出版社 / 著者からの内容紹介
日本人の食文化にすっかり溶け込んだ回転ずし。大人から子供まで、多くの日本人に愛されています。しかし、安い物にはワケがあります。安さのヒミツは、決して企業努力によって成り立っているのではありません。この本では、激安店の厨房の舞台裏から、市場が見向きもしない“キズモノ”(死にマグロや養殖物の底物、浮き物、奇形魚)流通の暗部、煮アナゴなど外国産加工品の薬品漬けの問題、そしてブラックバスやナイルパーチなどの外来種を用いた偽装魚、インチキ代用魚の実態まで、、激安魚介類のヒミツに真正面から迫る本邦初のホンカク本です。

 読んで吃驚したのと、まあ、そんなもんなんだろうな、と妙に納得してしまったのが半々、という本でした。
「安い寿司」を普通に食べて暮らしていきたい人にとっては、正直、「余計なお世話」な本かもしれません。

 僕にとって「回らない寿司屋」というのは価格的にも雰囲気的にも「敷居が高い」ので、寿司といえば専ら「回転寿司」ですし、スーパーのパック寿司なども愛用しているのですが、「こんなに安いっていうのは、何か理由があるのだろう」と薄々感じていても、こうして「ネタばらし」をされると、やっぱりちょっとショックではあります。
 こんなの食べさせられてたのか……って。

 そして、安さの最大の秘密は、ネタの偽装である。産地偽装だけでなく、アナゴの代わりにウミヘビを使ったり、化け物のような面構えの深海魚を高級魚のヒラメ、アイナメとして出す。ネギトロに至っては、身肉が赤いというだけで、マグロとは似ても似つかぬアカマンボウが混ぜられ、またブラックバスや真っ黒なアメリカナマズが高級魚のスズキに偽装される。なかには、養殖の現場で廃棄されているはずの奇形のマダイやハマチなどを使用しているケースさえあるのだ。
 いずれも、正規のネタに比べれば仕入れ値は破格。激安の秘密は「企業努力の結果」などではなく、ネタの仕入れ値に尽きるのである。

 ウ、ウミヘビ……?(ちなみに回転寿司でよく使われるアナゴは中国産の加工品が多いそうです。全部がウミヘビの仲間ってわけじゃないので一応)
 この本を読んだ直後は、「二度と回転寿司に行くのはやめよう、スーパーでパック寿司を買うのもやめよう」と固く決心したのです。

 しかしながら、少し時間が経ってみると、正直なところ「でもまあ、別にウミヘビだろうがブラックバスだろうが、食べてそれなりにおいしくて、体に悪いってものじゃなければ、そんなに目くじら立てるほどのものでもないかな」って気分にもなってきたんですよね。今までそんなものをさんざん食べさせられながらも、30年以上も生きてきたんだし。
 それに、「本物」の大トロの味なんて、食べたことないからわかんないし、高級店の高い寿司だから「本物」とは限らないよねどうせ。

 ……なんというか、回転寿司の安さの「カラクリ」には、現代の食文化の問題点が見事に凝縮されているような気がしてなりません。「とにかく安くないと買わない!」っていう消費者が、こういう「激安寿司」をつくってきた元凶なんですよね、きっと。たぶんみんな、「どうせ、高い食品だって安全とは限らないしね」ってあきらめているだろうし。

 いっそのこと、「ニセモノだけど安い!」っていうのと「高いけど間違いなく本物!」っていうのをキチンと明示してくれればいいのにな、と僕は思うのですが。

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