『Maria』私の声は一回性のものではない

Maria(2024)

監督:パブロ・ラライン
出演:アンジェリーナ・ジョリー、ハルク・ビルギナー、ヴァレリア・ゴリノ、コディ・スミット=マクフィーetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

パブロ・ラライン新作『Maria』がMUBIで配信されていたので観た。パブロ・ララインは歴史上の人物を扱った作品が多く、今回のテーマはマリア・カラスの晩年である。ジャクリーン・ケネディを描いたパブロ・ララインがマリア・カラスを描くのは必然であろう。なんといってもマリア・カラスは愛した男アリストテレス・オナシスに捨てられており、そのきっかけは彼がジャクリーン・ケネディと結婚したことにあるからだ。なので、パブロ・ラライン偉人伝に興味ある人には刺さる一本なのかもしれない。

『Maria』あらすじ

Maria Callas, the world’s greatest opera singer, lives the last days of her life in 1970s Paris, as she confronts her identity and life.
訳:世界最高のオペラ歌手マリア・カラスは、自らのアイデンティティと人生と向き合いながら、1970年代のパリで人生の最後の日々を過ごします。

IMDbより引用

私の声は一回性のものではない

本作の特徴は白黒やフィルムといったメディアを意識させる演出である。この手の演出はよく見られるわけだが、中盤においてマリア・カラスがレコードを嫌悪する場面に繋がってくる。マリア・カラスの歌声は一回性のものであり、常に真剣勝負。その時その時に出せる音に拘っているのだが、やすやすと過去の自分が再生産されていくレコードの音にモヤモヤを抱くのだ。そんな彼女はある種悪夢的に、自分のショーを反復する。記憶や夢で一回性を反復することと、メディアによって反復されることの差をパブロ・ララインは捉えようとしており興味深い視点だった。