『あるいは、ユートピア』和製ミスト

あるいは、ユートピア(2024)

監督:キム・ユンス
出演:藤原季節、渋川清彦、吉岡睦雄、原日出子、渡辺真起子、大場みなみ、杉田雷麟etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第37回東京国際映画祭の市山尚三氏による作品紹介動画を観ていて気になっていた『あるいは、ユートピア』がプライムビデオにて配信されていた。和製ミストである本作は、演劇的演出の悪いところが出ている作品でありながらも、役者の魅力が引き出されている良作であった。

『あるいは、ユートピア』あらすじ

大量発生した謎の巨大生物によってホテルに残された12人。非暴力&不干渉を合言葉に助け合いながら平穏に暮らしている。そんななか、ひとりの人物が遺体となって発見される。轟音が鳴りやまないながらも平和な日々は、果たして地獄か理想郷か。第34回東京国際映画祭Amazon Prime Video テイクワン賞受賞者の金允洙(キム・ユンス)監督長編デビュー作。

和製ミスト

「逃げてください!」

自衛隊が客室から人を誘導し撤退していく。やがて静寂が訪れると残された人がトボトボとホテル内を徘徊する。まだ何人か残っているのだが、自衛隊は去って行ってしまう。どうやら外には『風の谷のナウシカ』に出てくる王蟲のような巨大生物がたくさんいるらしく、外に出ることは叶わなそうだ。取り残された自衛隊員も通信を取ろうとするのだが、1日、2日、1か月と時が経っていく。

こうして共同生活が始まるのだが、残された人たちは一癖も二癖もあり緊迫感が流れる。監禁サバイバルものでありながら、1年ぐらいの時が経っても内装が綺麗であったり、野菜などの鮮度がある食料が腐ることなく潤沢にあるイージーモードな点は気になるところがある。また、基本的に演劇の延長として作られているような印象があり、演技が映画の演技ではないところもノイズになってしまっているのだが、ふらっと空間を割って入る爺さんの異様さだったり、何よりも渋川清彦や吉岡睦雄のサイコパス爆弾演技によるピリついた空気感が凄まじく、厭な映画を観たい日にもってこいの作品であった。