『Flow』ゲーム的からの逃れとして舟

Flow(2024)

監督:ギンツ・ジルバロディス

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『Away』で一躍注目されたラトビアのアニメ作家ギンツ・ジルバロディス新作『Flow』がまたしても好評でアカデミー賞の長編アニメーション賞ノミネートが堅いと囁かれている。今回も全編セリフなしで描かれており、超実写版『ライオンキング』が本来あるべき姿を提示しているように思われる。日本公開は2025年3月14日(金)に決まった。今回は試写で一足早く鑑賞したのでレビューしていく。

『Flow』あらすじ

世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとするなか、ある一匹の猫は居場所を捨て、旅立つことを決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物達と、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし彼らのなかで少しずつ友情が芽生えはじめ、逞しくなっていく。彼らは運命を変えることが出来るのか? そして、この冒険の果てにあるものとは――?

※第37回東京国際映画祭より引用

ゲーム的からの逃れとして舟

人類が滅亡したような世界、廃墟となった場所を動物が住処にし、プリミティブな生活が行われている。ネコはイヌを警戒しながら魚を取り、廃屋を寝床にしている訳だが、洪水が発生したことにより居場所を変える必要が出てくる。流れてきたボートに乗り込んだネコはイヌやトリなどとある種の呉越同舟の関係となりながら、どこへ流れつくか分からない旅に身を任せていく。

前作の『Away』が映画というよりもゲームのプレイ映像に近い印象を受けた。魅力的なインディーズゲームの風格が強すぎて、コントローラーを欲した。本作もまた、インディーズゲームタッチなのだが、映画的に留まろうとしている。何が映画的なのだろうか?それは「船」の存在である。映画は限られた時間の中で物語が運ばれていく。そのメタファーとして列車や車などといった乗り物が使われる。本作では舟が物語を運ぶ装置として機能している。ゲームであったら移動範囲が狭すぎて退屈してしまうであろう舟。しかし、映画ではその移動を通じてイベントが発生していく。水に落ちても簡単には死なないが、危険を引き寄せてしまう。そこに宙吊りのサスペンスが発生する。『Flow』では文字通りの宙吊りのサスペンス描写もあり、動物たちが力を合わせながらカピバラを救助する感動的な場面が用意されており、映画としての盛り上がりがパワーアップした一本に仕上がっていた。