やじうまの杜

愚かな人間の都合など完全無視、LLMのための高効率プログラミング言語「Sui」(粋)

AIが正確に、安く実行できることを最優先

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LLMの都合だけを考えて設計されたプログラミング言語「Sui」(粋)

 大規模言語モデル(LLM)が登場して以降、AIにプログラミングを助けてもらうことはすっかり当たり前になってしまいました。コードの意味を説明してもらったり、どんなコードを書くべきか教えてもらったり……コーディングタスクを丸ごとAIに任せてしまうことすら、もはや珍しくありません。

 であれば、LLMの都合だけを考えて設計されたプログラミング言語があってもいいのではないでしょうか。たとえば人間の可読性を無視してできるだけコンパクトにすれば、使用するトークンの量が減り、クラウドAIの利用料金を節約することができるでしょう。応答速度の改善、間違いの削減なども期待できるかもしれません。

 そんな発想の下、開発されたLLM専用のプログラミング言語「Sui」(粋)が「X」(Twitter)で話題になっていました。「GitHub」でホストされているオープンソースプロジェクトで、ライセンスは「MIT」。開発者は日本人の方のようです。



 この言語は、以下の5つの設計原則にもとづいて構築されているとのこと。

  • 行単位独立性:各行が完全に自己完結。こっちの方がAIには都合いいらしい
  • 括弧問題の最小化:入れ子(ネスト)は極力避け、関数ブロックのみに
  • 単一文字命令:可読性無視、トークン効率の最大化を目指す
  • 連番変数:変数はv0、v1、g0、a0というスタイル。人間に読めなくてもLLMがわかればよい
  • 明示的な制御フロー:ラベルとジャンプのみ。人間に配慮した読みやすい『for』や『switch』などの制御文は冗長なので排除

 たとえば10番目のフィボナッチ数を求めるコードは以下のようになります。

10番目のフィボナッチ数を求めるコード

 人間にはとても読めませんが、愚かな人間にも理解できる「Python」コードに翻訳(トランスパイル)できるので、ちゃんと動くのであればとくに問題にはならないでしょう。どうせ書くのはAIで、人間はそのコードの動作を確認できれば十分で、わからないところはAIに聞けばよいのです。

 そのほかにも、コンソールなどで対話的に利用できるインタラクティブモード(REPL)、コードファイル(.sui)を実行できるインタプリター、WebAssemblyへ変換・実行する機能などがあるそうです。興味があれば、ぜひどうぞ。